パワハラや過重労働でうつ病になったら労災申請手続きを!

パワハラうつ病

うつ病だと診断がおりた場合で、その原因が会社(仕事)にあると考えられる時には労災認定を検討しましょう。

と言うのも、労災が認定されると経済的負担が大幅に軽減出来て、治療に専念する事が出来るからです。

労災のメリット

うつ病で労災認定されると、

  • 治療費が無料になる
  • 給料の約8割が支給される
  • 受給期間の制限がない

と言ったメリットがあります。

治療費が無料になる

健康保険で治療を受けた場合、治療費の3割を負担しなければなりません。
治療に2年かかったとします。
それから1回当たりの治療費が3.000円かかり、月に2回、病院に通ったとします。
この場合、治療費は合わせて15万円ほどになります。
自立支援医療を使ったとしても、1割負担は負担しなければいけません。
また、入院費などは3割負担なので、電気けいれん療法などの治療を受けると大きな出費になります。
しかし労災認定されると治療費が全て無料になります。
数年でうつ病が寛解すれば良いですが、10年以上疾患している人もいる事を考えると、治療費が無料になるのは経済的に助かります。

給料の約8割が支給される

労災保険では、休業損害について、平均賃金の60%に相当する休業補償給付と、20%に相当する休業特別支給金の合わせて給料の80%を受けることができます。
傷病手当金の支給額は給料の約67%ですが、それよりも多い事になります。
しかも、ボーナスや残業代も含まれるので、長時間労働をしてうつ病になり労災認定されるとかなり金額的にも大きくなります。
障害厚生年金では、奥さんやお子さんがいても、月に15万円程度しか受け取れません。
元々貰っていた給料の金額にもよりますが、役職が付いている人であれば労災が金銭的に一番優遇されていると言えます。

受給期間の制限がない

時計

傷病手当は期間が最長でも1年半しかもらえないので、完解しなかった場合生活に困窮する事になりますが、労災であればうつ病の症状が治癒するまでずっと支給されます。
そのため、生活費は完全に保証されていると考えて良いでしょう。
また障害年金の場合、一度承認されると2年から3年間は保証されます。
しかし、更新時期になると診断書を再度提出して審査を受けなければいけないので、精神的にもゆとりは出来ません。
労災に認定されれば、時間をいくらかけても、治療費をいくらかけても良いので、じっくりうつ病治療に専念できる体制が整っていると言えます。

また、認定されて休んでいる期間に解雇されるようなことはありません。
復職してから30日間は、解雇もされません。

 

うつ病で労災申請する時の注意点

うつ病が労災と認められるには、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限られます。

仕事に原因がある場合というのは主に労働量の問題と人間関係の問題です。

労働量というのは労働時間や労働内容に関してのことで、仕事量が多過ぎて長時間労働を強いられている。あるいは、人員削減で人手がなくなり非常に忙しいなどといったことがあります。

人間関係というのはパワハラやモラハラ、セクハラのようなことで、上司からの精神的身体的な攻撃、同僚との人間関係であからさまな嫌がらせを受けた、私的なことに過度に立ち入るといったことなどがあり、こういったことが原因でうつ病を発症している場合には労災認定が下りす可能性がでてきます。

うつ病で労災申請する時の注意点としては、「うつ病を発症した原因が本当に仕事に起因しているか」という事があります。

うつ病発症要因として、仕事のストレスに加えて、私生活でのストレスも要因となっているケースでは医学的にその切り分けをしっかりとする必要があります。

例えば、家族との死別など辛い体験をしている場合、仕事のストレスが原因で発病したと判断されずに、労災が下りない可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

また、平成27年度に精神疾患で労災を請求した件数は、1515件ですが、そのうち、支給決定件数は僅か472件です。
うつ病の正確な数は公表されていませんが、およそ3人に1人しか労災認定されていないのが現状です。

労災を申請するポイントを抑えておかないと、本当は労災に認定されるような事象でも、否認される事があるので注意しましょう。

ただし、弁護士などに依頼をすると、この確率は少し上がっているようですね。

うつ病の労災認定要件

うつ病など精神障害の労災認定要件は以下のように定められています。

  1. 対象疾病を発病していること
  2. 対象疾病の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷及び個体的要因により対象疾病を発病したときは認められないこと

引用元:厚生労働省

この中で、特に重要視しているのは、【精神疾患の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること】です。

 

労災を承認させるためのポイントは証拠を残す事

申請が認められるためには、押さえておくポイントがあります。

それはしっかりと証拠を残しておくことです。証拠がなければいくら自分が長時間労働を強いられたと口で言っても説得力がありません。

長時間労働など労働量が労災の条件の場合

過酷な労働

うつ病などの精神疾患が労災認定される基準としては、厚生労働省が平成23年に「精神障害労災認定」として定めています。
主に下記の3つによって、長時間労働によってうつ病が労災に認定されるかどうかを判断します。

①「特別な出来事」としての「極度の長時間労働」

  • 発病直前の1か月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
  • 発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合

②「出来事」としての長時間労働

  • 発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
  • 発病直前の3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合

③他の出来事と関連した長時間労働 出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価します。
⇒転勤や異動などの前後に100時間を超える時間外労働があった場合があてはまります。

過重労働であれば、何時から何時まで働いていたのかを証明できるようなものが必要になります。

労働時間の証明に関しては、タイムカードのようなものがあるといつにどれだけ働いているかがはっきりとわかります。

他にパソコン上に労働時間が残っているという場合には、その記録を残しておくようにしましょう。

その他にメモであっても証拠のひとつとして認められますが、メモをとっただけではいつのことかわからなくなるのでしっかりと日付を入れておくことが大切です。

そして、そのメモの内容を当日中に家族や友達などだれかにメールしておくと、しっかりと内容と時間が記録されるので、そういった形に残る方法でうつ病になっていく事実を記録していくと労災申請の際の資料として効果があります。

人間関係が労災の条件の場合

争い

人間関係による強い心理的負担には、

  • パワハラ
  • セクハラ

などがあります。
その場合、労災認定を受けることができます。

パワハラ

パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。
つまり、上司や先輩、役職が上の人間がその立場を利用して、精神的や肉体的に苦痛を与える事です。

パワハラの例としては、

  • 「お前なんて役に立たない」「給料泥棒」「会社辞めろよ!」など侮辱する言葉を言う
  • 身体的に暴力をふるう
  • 机などを「ドン」と叩いて威嚇する
  • 大声を出す
  • 会社内で孤立させる
  • 根拠のない悪い噂を広める

などがあります。

セクハラ

セクハラ

セクハラとは「性的嫌がらせ」の事です。
セクハラには

  • 職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に性的な要求をして、応じなければ不利益を与える「対価型」
  • 性的嫌がらせを受けて職場環境が悪化する「環境型」

があります。

セクハラの例としては、

  • セックスを求めたけれども、応じなかったので減給や解雇をする
  • お尻や胸をさわる
  • 会社内で性的な発言を繰り返す
  • 容姿や体、夫婦関係などの質問をする

などがあります。

上司や同僚などからの精神的な嫌がらせを受けているという時にも同じように被害を受けた内容を記録しておくことが大切です。

パワハラやセクハラだと思われる発言内容のあるメールなどは必ず保存しておき、口頭での攻撃があった場合には音声を録音しておくと形のある証拠になります。

パワハラで有名な事件としては、豊田真由子氏が秘書に対していった「このハゲ~!」と言う暴言ですが、この時も秘書はしっかりと録音をしていたので、証拠にする事が出来ました。

最も効果がある方法はビデオを撮ることですが、実際にはビデオに残すことは難しくなるので、それに近い形でその時の状況が分かるようなものを残しておきましょう。

 

うつ病発症の6か月前からの記録が大切

メモ

労災はうつ病になる6か月前からのことが重要視されるため、日付にはしっかりと気をつけていなくてはいけません。

最初にうつ病だと診断された日を覚えておき、そこから6ヶ月間さかのぼって、その間に何があったかを証拠として残せるようにしておくと労災の申請が通りやすくなります。

うつ病を発症してしまっている時には、症状が強いと労災の申請という手間暇が煩わしく感じるかもしれませんが、ここで申請をしておかないと、時間が経ってから証拠を集めることは難しくなってしまうため、無理をしない程度に頑張って証拠を集めておきましょう。

また申請するための手順は書類を取り寄せて記入して提出するだけです。

これは簡単なものなので自分自身で記入して提出できますが、弁護士に相談をすると労災認定がもらえる可能性が高くなるようです。

専門の知識を持つ弁護士のアドバイスがあると、申請する際の細かなところまでポイントを押さえながら行うことができるからでしょうが、弁護士を雇うのには多額の費用がかかります。

そのため、経済的に余裕がない場合には自分自身で申請用紙を記入する必要があるでしょう。

うつ病になって退職をした場合には労災の申請を急いでしたとしても認定されるまでに半年から1年ほどかかります。

そのため、それまでの生活費が必要になる場合には傷病手当金を申請して、労災の認定が出るまでは傷病手当金を受け取るのが一般的です。

しかし、労災の認定がおりた後には受け取った傷病手当金は返却しなくてはいけないことをきちんと覚えておきましょう。

労災保険はさかのぼって申請した日からもらえるので、傷病手当金を返却した分は補うことができます。

うつ病を発症して退職をすることになった時には心身ともに疲れ果てている状態であることが多く、今後の生活についてまで考える余裕がないかもしれませんが、何かの対策をしておかなくては生活を維持することができません。

収入がないとうつ病の治療も受けられませんので大切なことです。

労災に認定されると傷病手当金を受け取っている時と違い治療費も無料になります。こういった利点が多いので認定を受けられるようにポイントを抑えて準備をしていきましょう。

 

 

 

 

労災認定する流れ

ステップ

認定するにあたって、その調査官が本人、家族、主治医、上司、同僚にヒアリングと呼ばれる事情聴取を行います。
ヒアリングの際に聴かれることに対して、ちゃんと答えられるよう準備をしておきましょう。
認定されやすい答え方がありますからそれを把握しておきましょう。
また、意見書の提出も求められます。
意見書、また労災の申請書においても、認定されやすい書き方がありますから、それも心得ておきましょう。
それから、認定の際、必要があれば職場の実態調査も行われます。
そのことも踏まえてください。
認定されるまでに6ヶ月~8ヶ月ほどかかります。
その期間の生活費については、傷病手当金を受け取ることができます。

うつ病で労災申請するなら

うつ病で労災認定される件数は年々増加していますが、割合的には決して高くはありません。

仕事に起因するうつ病は相当数いますが、会社を相手取って争う事に抵抗があるために労災を申請する人はほとんどいないのが現状です。

また、精神状態が不安定な中で会社を敵に回す事にもなりかねない労災は、ハードルがかなり高く、しんどい作業になります。

会社が労災の手続きに前向きであれば、申請をした方が良いですが、そうでない場合は弁護士に依頼をするのが良いでしょう。

 

私も以前勤めていた会社でパワハラの被害を受けていたので、労災を申請したかったのですが、それ以前に息子を亡くしたことが原因でうつ病を発症していました。

そのため、労災ではなく傷病手当金と障害年金を受給する事で何とか生計を立てています。

うつ病を発症してから9年が経過していますが、今感じている事は「うつ病は想像以上に治らない」という事です。

ある程度改善したと思うと、また悪化すると言ったサイクルを繰り返しているので、なかなか定職に就けないのが現状です。

もしも、労災を認めてもらえていたら、お金でこんなに苦労する事はなかったのにと今でも思います。

労災を申請する事は、会社に歯向かうように思うかもしれませんが、会社の悪い部分を正す事にも繋がります。

他の従業員がうつ病にならないようにするためにも、証拠を集めて労災を申請してみませんか?

うつ病で労災認定を受ける方法

コメント

  1. […] この記事内容に関しては、証拠もそろっているので、労災や処分も通ると思いますが、世の中には証拠がなかったりするために、訴える事も労災が認められないケースも本当に多いんです。 […]