ここ何年も、冬場はずっと憂うつ気分で、クリスマスやお正月を楽しめていない。「今年こそは」と思っていても「冬太り」を繰り返してしまうのはナゼ? それは「冬季うつ」の症状の可能性がある。気になる方は一度、精神科などに相談を。
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ツバメが春に巣作りをし、クマが冬眠するように、生き物の多くは季節の動きに合わせて生きている。この季節変動をもたらすのは、日照時間の長短だ。
夏は太陽が出ている時間が長く、冬は短い。私たち人間は季節変動に影響されにくい生き物だが、影響を受けやすい人もいるとわかってきた。「全国の成人およそ1000人を調べたところ、2%の人で、気分や体重、睡眠時間に大きな季節変動が見られた」。国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長はこう話す。
こんな「季節に敏感な人」に見られる精神症状が冬季うつ。うつ病の一種で、女性に多く、患者数は男性の1.5倍いる。冬季の気分の落ち込みに加え、「何事もおっくうで仕事がはかどらない」「人に会うのが面倒」といった「社会的引きこもり」症状が表れるのが特徴だ。また、うつ病では通常、食欲が低下するが、冬季うつでは食欲が高まる。特に炭水化物を食べたがり、結果として体重が増える。
治療のカギを握るのが生活改善で、三島部長は「まずは1日1時間、太陽の光を浴びること」と話す。漫然と日光浴をするのではなく、光を目の奥に届かせるのがポイント。光を見ることで体内時計が調整され、朝と夜、夏と冬といった自然界のリズムに適応しやすくなる。さらに、気分の波や食欲をコントロールする働きがあり、冬季うつの症状とも深く関連している神経伝達物質「セロトニン」の合成量を光の刺激で増やせる。
食事も重要だ。セロトニンを合成する原料となるのが、必須アミノ酸のトリプトファン。それが足りないと、光を浴びても効果が得られにくい。
三島部長は「トリプトファンは、普通に食事をとっていれば、不足する心配はほとんどない。だが、冬季うつの人は炭水化物に偏った食事をとりがちなので、摂取量が足りなくなることがある」と話す。トリプトファンを多く含む豆類、肉類、チーズなどを積極的に食べるように心がけるといいだろう。
下表は、冬季うつの可能性があるかどうかを調べるチェックリストだ。三島部長は「12点以上で冬季うつの可能性がある。気持ちの落ち込みなどで日常生活に影響が出るようなら、精神科に相談を」と話している。
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