2017年の世界保健デーのテーマは「うつ病」だったのですが、世界的にもうつ病の患者数は増加していて、自殺する人も多いため大きな問題になっています。
そこで今回は、老年期うつ病について、中核的なうつ病である「身体性うつ」を中心に、もうひとつのうつ状態「心理性うつ」と比較しながら、東京医療学院大学の上田諭先生に語っていただきました。
うつ病は本当に心の風邪なのか?
「うつは心の風邪」というキャッチフレーズをご存知でしょうか。アメリカからSSRIという抗うつ薬が日本に入ってきて、その時の盛大なキャンペーンによってこの言葉が広まりました。そして、精神科を受診する方が増えて、それまで40万人だったうつ病患者が、2000年代以降には100万人以上に膨れ上がったのです。
しかし、うつ病は本当に「心の風邪」なのでしょうか。運動して酒をやめて眠れば良くなると主張する医師もいますが、本当の中核的なうつ病はそんなに簡単なものではありません。
うつ病には2種類ある
老年期だけではありませんが、うつ病には「身体性うつ」と「心理性うつ」があると考えます。合併することもありますが、本来きっかけも違えば症状も異なります。
>>老人性うつ病に関する記事はこちら!
「心理性うつ」の場合、人間関係のトラブルやショックな出来事などのストレスが主な原因です。高齢の方は、認知症の初期に周囲から指摘され叱られることで多く生じます。このような「心理性うつ」は、原因がなくなれば普通改善します。しかし、中核的なうつ病である「身体性うつ」の場合、明確な原因といえるものがありません。原因がないこともあります。原因らしきものがあってそれが好転しても、うつ状態は良くなりません。
たとえば、小さな生活の変化、周囲の気になる言葉、風邪をひいた、軽いけがをしたなどといった「ちょっとしたこと」が引き金になることが多くあります。
高齢者に多い「身体性うつ」の症状と治療法
「心理性うつ」の場合は、気が紛れることをする、気持ちを切り替える、考え方や生き方を変えることも有効です。医師や臨床心理士あるいは親しい友人が話を聞いてあげたり、解決方法の相談に乗ったりすることで改善が期待できます。
一方で「身体性うつ」の場合、気分の落ち込みややる気のなさに加えて、食欲がない、眠れない、腰痛が取れないといった身体の症状が通常見られます。症状が持続すると、死にたい気持ちが強くなったり、「家が破産してしまう」とか「罰を受ける身だ」という妄想が出たりすることもあります。
脳に原因があることは推定されますが、原因は分かっていません。自然に治ることはまず見込めず、大事なのは休息(働いている場合は休職)と身体治療(薬物療法と電気けいれん療法)をすることです。薬は抗うつ薬を服用してもらいますが、早い方は2週間くらいで快方に向かうこともあれば、薬がうまく合わない場合には1年以上かかることもあり、飲んでみないと効果が分かりません。概ね6~7割の方は薬の治療で元気になれます。
また、難治の場合に行われる電気けいれん療法という脳に数秒間だけ電気を流す方法では、8~9割の方に効果が認められています。
兆候に気付いたら必ず診察・検査を!
「身体性うつ」の場合、薬物療法や電気けいれん療法など何らかの身体治療をしないと治ることはありません。元気がない、食事ができない、眠れないなど本人が苦痛に感じる症状があれば、まずは診察を受けましょう。
老年期うつ病は女性に多いのですが、男性は頑固で我慢強く頑張ってしまう方が多いので、なかなか心療内科や精神科を受診しない傾向があります。しかし、うつ病(身体性うつ)は努力不足や怠けのせいでなるのではありません。本人のせいではないのです。身体の病気が努力で治らないのと同様、精神力で治すものではありません。ぜひ精神科の門をくぐってみて下さい。
うつ病になったらまず考えなければいけない事として、「うつ病は心の風邪」と言う間違った認識をただす事です。
うつ病は確かに風邪のように誰でも発症する可能性がありますが、放っておいて完治するものではないですし、その苦しみは風邪というよりもガンに近いと言えます。
大袈裟ではなく、うつ病の苦しみに耐えかねて日本でも毎年1万人以上の人が自殺をしているのです。
また、抗うつ剤を服用していれば完治すると思いがちですが、実際には抗うつ剤で効果が出ない人も半数近くいます。
そう言った人は電気けいれん療法などを積極的に取り入れる必要があるのですが、まだまだ認知度は低く、「怖い」と言うイメージによって受けないで何年も苦しんでいる人がたくさんいます。
うつ病になってしまったら最後、一生かけてうつ病と戦うぐらいの気持ちがないと、希死念慮によって自殺に追い込まれてしまいます。
家族や周りの友人も可能な限りうつ病について勉強してサポートをしてあげて下さいね。
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