うつ病は日本でも100人に3~7人が経験しているといわれる精神疾患だ。うつ病患者の多くは適切な治療により回復するといわれるが、どの治療法でも効き目がない患者も存在する。カナダの新聞社のオンラインメディア「National Post」(12月21日付)によると、最近では重度のうつ病患者に対する外科的治療も試みられている。脳に電極を埋め込み、不具合を起こしている場所を刺激するというのだ。
■治療抵抗性のうつ病
うつ病とは憂鬱さや気分の落ち込みがある程度以上強く、長く続く状態を指す。うつ病は日本はもちろん、世界的にも多くの患者のいる精神疾患であり、日常生活に支障をきたし、苦しんでいる人々は多い。最近では研究が進み、薬物療法などの治療で改善する患者も多いのだが、およそ3分の1の患者はどの治療でも改善しないといわれる。そんな難治性うつ病の治療として、脳深部刺激療法が注目されている。
■脳深部刺激療法とは
脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation; DBS)とは、頭蓋骨に小さな穴を開けて、脳内の機能不全を起こしている場所に刺激電極を埋め込む外科的治療法だ。脳内の電極のワイヤーは患者の胸部に埋め込んだ刺激発生装置とつなぎ、適切な電気刺激を与えて症状の改善を試みる。この方法は、日本でもパーキンソン病の治療などに用いられている。
難治性うつ病のDBSでは脳のブロードマン25野という領域を刺激する。この領域は脳内でうつ病との関連が指摘されている場所で、悲しみや痛みといった情感に関する場所と考えられている。
DBSを受けた難治性うつ病のある患者は、自分が回復し始めた日のことを次のように語っている。彼女は買い物に出かけ、駐車場で木々の色を見てすすり泣いたという。
「長年見たことのないような、焼け付くような赤、激しい黄色やオレンジ色を見たのです」
彼女は重度のうつ病によりあらゆるものへの興味や喜びを失っており、感覚を失っていたと自身の症状を語っている。だが、治療を受けた2年2か月後、ようやく感覚を取り戻したというのだ。灰色の世界が突如として色付いたようなものだった。
■DBSは本当に効果があるのか?
しかし、DBSのうつ病への効果については疑問符もつけられている。今年10月に「The LANCET Psychiatry」に掲載された論文によると、90人の患者を対象に2008~2012年まで行われた臨床試験では、術後6~12カ月間にうつ病への有意な効果は見られなかったという。また、28例の患者は感染症や術後てんかんなど重篤な有害事象を示し、うつ病の改善がみられずに二人が自殺した。
だが、「治験の失敗は治療の失敗ではない」と米国・エモリー大学の神経学者ヘレン・メイバーグ氏は語る。彼女はうつ病患者へのDBS治療を長年研究してきたこの分野の第一人者であり、先の治験にも関わっている。
メイバーグ氏によれば、DBSの効果はすぐに出ないのだという。DBS治療を始めた2年後、90人の患者のうち25人は抗うつ剤への反応が見られるようになり、13人には症状の緩和がみられたという。これは慢性的な症状が良い状態になるには、より長い時間がかかることを示唆している。現在でも44人はDBSの電極を埋めたままで、3~5年おきに電池を交換している。
今のところ、DBSは重度のうつ病の実験的な治療法の一つに過ぎない。頭蓋骨に穴を開けて脳に電極を埋め込むという外科手術が、患者の精神症状をさらに悪化させる可能性を指摘する医師もいる。だがどのような方法であれ、先への明るい見通しは大切なものだ。病で苦しむ人々にとって、いつか治るという希望ほど必要なものはないのだ。
DBS治療はヨーロッパではうつ病に対して既に行われている治療と聞いたことがあります。
私が知っている情報としては、約7割のうつ病患者に対して有効だったという事。
うつ病の厄介な所は、幾ら精神科医の言うとおりに治療を行っても効果が出ないで苦しみ続ける患者が約半数いると言う事実です。
また、完解したと思っても、以前のように無理は出来ないですし、過度なストレスがかかるとすぐに再発をしてしまいます。
現在うつ病に対して一番有効率が高い治療法は「電気けいれん療法」ではないかと思っています。
8割から9割の患者に対して有効で私も2回受けましたが、効果の高さは驚くほどです。
それに比べると、外科手術が必要で有効率も低いDBS治療がどこまで広まるかは不明ですが、中には薬物療法、電気けいれん療法、TMS治療など全ての治療を行っても改善しないで苦しんでいるうつ病患者もいます。
こういった患者はDBS治療を受ける価値はあるのではないでしょうか?
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