最新のうつ病血液検査「血中PEA濃度測定」とは?うつ病発見率90%を誇る検査

血液検査うつ病

うつ病かどうかを判断する検査方法は、一般的には医師の問診で判断するのが主流でした。しかし、最近になってうつ病かどうかを判断する新しい検査方法が開発されて注目されています。その検査方法とは「血中PEA濃度測定」と呼ばれるものです。

血中PEA濃度測定とは

この血中PEA濃度測定では、血液の中に存在するPEAという分子を測定することでうつ病にかかっているかどうかを診断することができます。PEAとはリン酸-エタノール-アミンが結合した分子のことです。

これまでうつ病かどうかを検査する方法として光トポグラフィー検査が主流でしたが、「光トポグラフィー検査」のうつ病発見率が60~80%なのに対し、PEA検査は90%を誇ると言われています。

このうつ病血液検査は、2011年から本格的にPEA濃度測定によるうつ病診断の臨床研究を始めているためまだそこまで確立されているわけではありません。

ただ、来院された方に採血に協力してもらったうえで診断分類ごとのPEA濃度測定を進めた結果統合失調症・うつ病・うつ病部分寛解と呼ばれるカテゴリに該当する人では血液中のPEA濃度が健常者のものよりも低いというデータが分かってきました。

統合失調症患者の場合は健常者と比較してそこまで数値に差が出ているわけではないのですが、うつ病やうつ病から治りかけてきた人についてははっきりと健常者よりも低い数値が出るようになり病気と考えられるようになってきています。

そして、うつ病が回復していくようになることでPEA濃度も段々と上がっていく傾向がみられるようになります。うつ病の治療を行った患者を2ヶ月から3カ月ごとに採血し測定をした結果として、PEA濃度が1.5〜3.0μM(マイクロモーラー)の間で安定し始めてくるようになりました。

PEAが1.8uMくらいの数値になると健常者と大体同じ生活ができるようになります。

うつ病だと判断されやすい基準としては、PEA濃度が1.42uMより低い人においては88%がうつ病であるとされておりうつ病治療の補助として医師の診断に役立てられやすくなっています。

以前から行われている医師の問診については、一つ医師の勘によって症状の有無が決まってくるというあやふやな部分があったことがデメリットでしたがこのPEA濃度が出るようになってより正確にうつ病だと診断されるようになり今後期待されている検査方法です。

実際今年に入ってから「PEA 測定試薬キット」の開発を行っているHMT(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ)の株価が大幅に値上がりするなど、市場でもPEA検査の将来性に希望が持たれています。

>>HMTが続伸、大うつ病性障害バイオマーカーPEAの論文が学術誌に掲載。

もちろん医師の問診は今後も大切な事には変わりありませんが、うつ病診断の補助的役割には十分なる可能性があります。

血中PEA濃度測定のデメリット

ただ、血中PEA濃度測定には普及させるにあたってデメリットも生じています。それは、検査費用であり実際に全国に普及させる場合には血液検査料はかなり高額になると予測されています。

現在はまだ臨床実験である程度分かっているという段階ですので、検査費用は今のところ川村総合診療院など一部の病院では無料で受けることができます。しかし、まだこの血液検査ができるところがほとんどないという点がネックです。

コストが増大する理由としては今の質量分析計で測ると、費用の面で高額になってしまうという傾向が強いためです。そのため質量分析計以外のより安価な方法によりPEAの測定を行うことが考えられています。

コストが引き下げられた結果どのくらいの金額にまで抑えられるのかについてはまだ分かっていません。ただ将来的にもし医療保険でカバーできるのであれば社会への広がり方はまた変わってくるようになるため期待されています。

もしもうつ病の血液検査が保険が適用されることで千円から3千円くらいまで金額でできるようになれば誰でも気軽に検査してみようと思うと予測されており、現在の研究ではそれを目指している段階に入っているといえるでしょう。

それ以外にも、PEA検査で正常と判断された場合にうつ病患者の風当たりがきつくなると言ったデメリットも考えられます。

正確度が90%という事は、逆に言うと10人に1人はうつ病であるにもかかわらず、PEA検査では陰性になる事を意味しています。

こういったうつ病患者は、辛い症状を持ちながらも会社や家族から理解をしてもらえない可能性は否定できません。また、将来的に障害年金の受給要件にPEA検査が導入されると、重度のうつ病でも障害年金や傷病手当金などが受給出来ない可能性も残されています。

あくまで補助的な検査なので、どこまで信頼性を持たせるかは不明ですが、様々なシチュエーションを想定しながら、導入する事が大切になってきます。

現段階では医師の診断が大切

ただ、一番大切なのは、うつ病のサインに気づいた場合には1日も早く医師に相談して解決を目指すということです。

まだこの血液検査は実用化になっていない段階ですので、今のところはうつの兆候が見られた場合にはすぐに医師による相談を行っておいたほうがスムーズといえます。

現代社会においてはうつ病にかかっている人は増えてきています。原因はストレスによるものや人間関係の悪化などさまざまな原因が考えられており、一人で抱え込むよりは医師と相談しておいたほうが解決しやすいといえます。

以前に比べるとこうした病気に対する理解は深まってきていることについては事実です。今の段階では、医師による問診もまだまだ主流といえることを留意しておきましょう。

そして、近い将来さらにこうした症状が人に理解されるようになればうつ病にかかっても安心して治せるようになると見込まれます。客観的な基準を出すにはまだ足りていませんが、それでもきちんと取り組んでおけばこの病気はなおります。

早期発見が特に重要となりますので留意しておきましょう。

この血液検査方法を開発した川村総合診療院というクリニックの院長も、こうした症状に対して予防法を色々な観点から提案しているため話を聞いておいて実践に移すことは有効です。

運動をすることや気分転換をうまく図ること、ストレスの発散方法を探すことなどはどれも病気にかからないための方法として誰でもできることですので無理のない範囲で実践しておくようにすると良いでしょう。

コメント