統合失調症では、一定の要件を満たせば、障害年金の対象になります。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
障害基礎年金では、1級と2級しかありませんが、障害厚生年金では3級もあります。
統合失調症などの精神疾患において、障害年金1級や2級を受給するのはかなり難しいとされています。
しかし、障害年金3級であれば、ポイントさえ抑えれば比較的容易に受給する事が可能です。
障害年金3級の認定基準
統合失調症における障害年金3級の認定基準は、
「残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの。」となっています。
つまり、統合失調症の主症状である妄想や幻覚などの体験があり、労働するのが困難な事を証明できれば、3級に該当してきます。
統合失調症で障害年金が難しい理由
統合失調症で障害年金を受給するためには、障害年金についてしっかり勉強する事が大切です。
良くある間違いとして、
- 医師任せにしている
- 年金事務所に聞けば受給ポイントを教えてもらえる
と言う事があります。
医師任せにしている
統合失調症で障害年金3級を受給するための認定基準は、「労働に制限を受けているか」や「日常生活がどれほど困難になっているか」が大切なポイントです。
しかし、医師はあなたの日常生活も労働している時も見る事はありません。
医師が知っているのは、「普通に通院出来ているあなた」に過ぎません。
知らない事を診断書に書く必要があるので、想像で書くしかないのですが、通院が問題なく出来ていれば、「仕事も問題なく出来ているだろう」「日常生活もそれほど困っていないだろう」と言った前提で書いてしまします。
年金事務所に聞けば受給ポイントを教えてもらえる
年金事務所は全ての人に公平である必要があります。
そのため、特定の個人に障害年金3級の受給方法などは絶対に教えてくれません。
教えてくれるのは「障害年金を申請するためには、どのような書類が必要か」という事だけです。
ある程度書類の中身を見てはくれますが、それが3級に該当しそうかどうかは絶対に教えてくれないので、注意して下さい。
統合失調症では診断書が重要
統合失調症で障害年金3級を受給するためには、医師の書く「診断書」が何よりも重要になってきます。
精神の障害年金で用いられる診断書では、「幻覚妄想状態」「統合失調症等残遺状態」の記載事項があります。
幻覚妄想状態
幻覚妄想状態の欄には、
- 幻覚
- 妄想
- させられ体験
- 思考形式の障害
- 著しい奇異な行為
を選択する箇所があります。
これらに該当する症状を主治医に報告する事が大切です。
統合失調症等残遺状態
統合失調症等残遺状態の欄には、
- 自閉
- 感情の平板化
- 意欲の減退
を選択する箇所があります。
統合失調症によって、どのような弊害があるのかを主治医にしっかり伝えましょう。
日常生活能力の判定・程度
日常生活能力に関しては、「判定」と「程度」の2種類があります。
統合失調症で障害年金3級を受給するためには、特に日常生活能力の判定の欄について、詳細に主治医に伝える事が大切です。
具体的には、
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
の7項目があります。
これらを1人暮らしをすると仮定した時に、どこまで行えるかを医師に伝えましょう。
適切な食事
統合失調症の人の多くは、家族と同居をしています。
そのため、家族が食事の管理を行っている事が多いのですが、「食事はしっかり食べれています」などと主治医に言うと、3級に該当しなくなる可能性が高くなります。
それよりも、「家族が食事を作ってくれていますが、一人では買い物も行けずに食事の支度をする事も出来ません」と言った方が3級を受給出来る可能性は高くなります。
虚偽はもちろんダメですが、多くの統合失調症の人は、3食自分で食事の用意をしたりすることは困難なケースが多いものです。
ご自分の状態をより適切に主治医に伝える事が大切です。
身辺の清潔保持
入浴や歯磨き、洗顔などが該当するのですが、統合失調症では意欲の減退が見られることがあります。
入浴など「面倒くさい」と言う感情が強く働き、1週間に1回程度しかお風呂に入れないといった事があれば、しっかりと伝えておきましょう。
金銭管理と買い物
統合失調症の人にとって難しいのが金銭管理です。
妄想などの症状があると、「誰かが自分のお金を盗もうとしている」と言った思考が働いてしまいます。
そのようなケースでは、自分で金銭管理が出来ないため、ご家族の方にしてもらっているのではないでしょうか?
買い物に関しても、妄想や幻覚の症状があると、適切に行う事が困難になります。
ご自身の体験談を交えて、具体的にどのような事が出来なかったのかを伝えると、障害年金3級を受給しやすくなります。
通院と服薬
統合失調症では、服薬に関しても注意が必要です。
処方された薬を「毒薬を飲まされる」と思い込むケースもあります。
適切な服薬や通院が出来ているかを、医師に伝えましょう。
他人との意思伝達及び対人関係
妄想や幻覚が強いと、社会的なコミュニケーションを取ることが困難になります。
人前に出るのを極端に恐れる事もあるでしょう。
統合失調症を患う前には、たくさんの友人がいたにも関わらず、発症後は交友関係がなくなるケースが多くあります。
コミュニケーションを取る上で、困っている事をしっかりと医師に伝えましょう。
身辺の安全保持及び危機対応
震災などの災害時に、適切に身を守る事は、統合失調症の人にとって非常に困難と言えます。
具体的な例を挙げる事は難しいでしょうが、想定できる範囲でどのような不具合が生じるかを伝えるようにしましょう。
社会性
社会生活を送るうえで、公共施設の利用が出来るか、銀行などでお金の出し入れをする事が出来るかなどの欄になります。
よくあるケースとしては、ATMは人がいないのでお金の出し入れが可能だけれども、窓口にはいくことが出来ないと言う時があります。
その場合も、「銀行でお金の出し入れは出来ます」と言うのではなく、「ATMは出来るけれども、窓口では困難です」と言った方が3級に該当しやすくなります。
就労状況
診断書で、日常生活能力に次いで重要視される項目が、就労状況です。
特に、障害年金3級を受給しようとすると、就労する事が難しい事をしっかり説明する必要があります。
一般的には、フルタイムで就労していると3級は非該当になるケースが多いと言われています。
しかし、アルバイトや障害者雇用で勤務している、あるいは週に数回しか勤務していない場合は障害年金3級を受給しやすくなります。
そのため、就労状況を主治医に正確に伝えましょう。
単に「就労中」と書かれると障害年金非該当になるので注意が必要です。
- 週に何時間勤務しているのか
- 就労する上で受けている配慮は何か
- 仕事が終わって家に帰ったら疲労困憊で動けないなどはないか
と言った観点で主治医に伝えると、障害年金3級を受給しやすくなります。
統合失調症で障害年金3級を受給するためには
統合失調症で障害年金3級を受給するためには、医師とのコミュニケーションが不可欠です。
また、医師は障害年金のプロではないので、患者側からしっかりと情報をアウトプットする事が大切です。
統合失調症を患っている中で、医師とのコミュニケーションを適切に取る事が困難な場合は、ご家族の方に同行してもらい、代わりに説明をしてもらうと良いでしょう。
障害年金は一度書類を提出して、不支給になると、決定を覆す事はほぼ不可能です。
万全の準備をしてから、医師に診断書作成の依頼をしましょう。
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