ストレスにさらされることの多い現代、うつ病は決して珍しい疾患ではなくなりました。
うつ病になって最も辛いのは本人ですが、明らかにいつもと様子が違うときは周囲が気付いてあげることも必要と言えるでしょう。
きちんと医師の治療を受けること、そして家族を始めとする周囲の協力も大切です。接し方が分からず戸惑うことがあるかもしれませんが、分からなければ医師に相談するなどアドバイスをもらうと良いです。
うつ病にかかってすぐは、程度にもよりますが起きられない・仕事に行かれない状態になることがあります。職場の人間から見ると、遅刻が増えて休みがちになったと思えるでしょう。
家族など同居人がいる場合は、なかなか起きず仕事に行かれないので「だらしがない」と怠けているように見えることがあります。
全員に当てはまるわけではありませんが、真面目で責任感の強い人ほどうつ病にかかりやすいと言われています。
頑張り過ぎて限界になった人間に対して、だらしがないと叱責することは追い詰めることになるので要注意です。
うつ病の基本的な過ごし方【仕事は休職】
うつ病になったらまずは休養をしっかり取る事が大切です。
仕事を休職することができたら、医師に相談をして少し余分に休職期間を設けてもらいしっかりと休養をとるようにして下さい。
起きようにも起きることができず、寝ていることがあっても怠けているわけではないと知っておくことが大切です。無理強いせず、叱責したり激励せずにゆっくり休める環境を作りましょう。
休職することは決して悪いことではありません、うつ病になってしまったのも本人が悪いわけではないです。むしろ、うつ病になるまでこき使ってきた会社に責任があるので、引け目を感じることなくゆっくりしましょう。
休職中は無理なく過ごすことが一番ですが、投薬治療の他に太陽の光を浴びたり食生活を見直したりするなど日常生活を可能な範囲で改善すると良いでしょう。
太陽の光を浴びる
外に出ることが難しいなら、室内に朝の日差しが入るようにすれば太陽の光を浴びることができます。
うつ病になると脳内ホルモンの一つ「セロトニン」が減少するために不眠症になりやすいものですが、日光浴をする事で体内時計を正して、セロトニンを増加する事が出来ます。
直射日光が苦痛にならない程度に、暖かい日差しだなと思う程度で構いません。太陽の光を感じて脳内ホルモンを分泌させるためには、少しまぶしいですが瞳孔の奥に太陽の光を入れるようにします。
散歩をする
生活パターンが少しずつ戻ってきたら、ほんの少し散歩に出たりするのも効果的です。
うつ病になると少し動いただけで息が上がるようになりますが、身体を全く動かさないとなかなか改善しません。
少しで良いので、毎日散歩で体を動かす事によって「外に出る」という事に対する恐怖感を無くし、体内の血流を良くすることが出来ます。
うつ病の身体症状の中には、肩こりや首のコリ、頭痛などがありますが、血流を改善させる事で緩和する事が出来ます。
最初はすぐに戻っても問題ありません、無理をしない・負担にならない過ごし方をするようにして下さい。
栄養バランスの取れた食生活にする
規則正しい生活にしたり、食生活をコンビニのお弁当やファストフードではなく栄養バランスの取れたものにしてみることがおすすめです。
サプリメントなどを摂取するのではなく、野菜など食材から摂取することがポイント。
セロトニンは腸内で一番分泌されるので、食生活をただすのは基本となります。
逆にジャンクフードや甘い物ばかり食べていると、脳が回復するために必要となる栄養素が不足してしまい、悪化するので注意が必要です。
うつ病になると、日中の過ごし方次第で回復度合いが変わってきます。
自律神経を整えて、副交感神経を優位にするためにはリラックスさせることが大切です。
リラックスする事で、うつ病によって低下した脳の機能が早く回復します。
特にこれまで仕事で無理をしてきた人にとっては、心身をゆっくり労わる大切な時間になるので、リラックス法を意識して取り入れるようにしましょう。
自律訓練法
自律訓練法とは、1932年にドイツのJ.H.シュルツによって作られた心理療法です。
自己暗示をかけて心身をリラックスさせることで、精神を安定させることが効果があります。
自律神経失調症の治療にも使われていて、空き時間を使って簡単に出来る過ごし方です。
うつ病や自律神経失調症になると、身体がどうしても緊張状態にあるので、ベッドに横になっていても中々リラックスする事が出来ませんが、自律訓練法をすると5分程度で体が暖かく落ち着いてきます。
自律訓練法のやり方
初めに「心が落ち着いている」と心の中で3回繰り返します。
続いて、下の言葉を心の中でつぶやくながらイメージをしていきます。
- 手足が重たい(右手→左手→右足→左足の順番)
- 手足が暖かい(右手→左手→右足→左足の順番)
- 心臓が静かに規則正しく打っている
- 楽に呼吸をしている
- お腹が暖かい
- 額が心地よく涼しい
最後に、両手を強く握ったり開いたりして背伸びをします。
入浴剤でゆったりお風呂に入る
うつ病になるとお風呂に入るのが面倒になる人が多いと思いますが、入浴の効果は侮れません。
少しぬるめのお湯に15分程度入浴する事で、副交感神経が優位に働きリラックス出来て、免疫力もアップします。
入浴剤を入れると、香りが心地よいだけでなく、血流もアップするのでうつ病にもおすすめですよ。
緊張してガチガチに凝り固まった首や肩もほぐれてきます。
ポイントは、
- お湯の温度は38℃~40℃くらいで熱すぎない事
- 10分から15分程度入浴する
- 炭酸ガスや硫酸ナトリウム入りの入浴剤を使うと血流が改善されて肩こりにも効果があります
です。
炭酸ガスの入浴剤は、すぐに溶けてしまうので効果もなくなると思いがちですが、実は炭酸ガスはお湯に全て溶けてからの方が効果があります。
炭酸ガスが皮膚に浸透して、血管を拡張してくれるので体が芯から温まるのです。
うつ病の人の前頭葉の血流が滞り、首や肩のコリが酷くなります。
入浴剤を使ったお風呂に毎日入る事で、うつ病にも良い影響が出てきますよ。
音楽を聴く
うつ病では脳内神経伝達物質が減少しています。
特に注目されているのが、セロトニンと言う物質。
SSRIやSNRIと言った抗うつ剤では、セロトニンの量を増やす事で、うつ病の症状を緩和しています。
ただ、セロトニンは食事をしている時やお風呂に入っている時でも出ています。
身体の力を抜いて、リラックスしている時に多く出るので、音楽を聴く場合はクラッシックやヒーリングミュージックなどを聞きましょう。
アロマ
人間は好きな香りをかぐとセロトニンが出ます。
ストレス解消のアロマとしてはラベンダー、ジャスミン、ローズなどがお勧めです。
また、クラリセージ、ペパーミント、ローズマリーと言ったハーブ系のアロマはリラックス効果が高いですよ。
森林浴
森林浴をするとマイナスイオンでリラックスできると言う話しは聞いたことがあると思いますが、実はそれ以外にもたくさん効果があります。
ストレスホルモンを減少させ、うつ状態を緩和させる
副交感神経が優位になって、リラックスできる
自律神経の調整
ナチュラルキラー細胞の活性化による、免疫機能向上
森林浴の楽しみ方
まずは近所の公園など森林がある場所に行きます。
騒音があったりするとリラックス出来ないので、比較的静かな方が良いでしょう。
森林の中をゆっくり歩いて回って、自分のお気に入りの場所を探します。
ポイントは、歩く時に五感を働かせながらゆっくり歩く事。
お気に入りの場所は個人差があるので、あなたが気に入るという事が一番重要です。
美味しい空気を全身で吸い込むようにして、リラックスします。
本を読んだり、寝転がったり、風の音に耳を傾けたり思うようにして楽しみましょう!
動物と過ごす
アニマルセラピーと言う言葉があるように、動物と過ごす事でストレス解消や癒しの効果があります。
実際、ペットを飼っている人は、飼っていない人よりも20%病院に行く回数が少ないと言うデータもあります。
犬や猫を飼っていない人は、猫カフェやフクロウカフェに行くのも良いですし、乗馬をするのもおすすめです。
また、少し外出するエネルギーがある時には、イルカと一緒に泳ぐと心が洗われるように気持ち良いですよ。
無理をしない範囲で過ごしましょう
どれもリラックス出来て、気持ち良い事ですが、うつ病の症状が酷い時に無理やりしては意味がありません。
あくまであなたが楽しめてリラックスする事が目的なので、無理にしてストレスを溜めると逆効果になります。
マイペースでうつ病の症状に合わせてやってみて下さいね。
うつ病の過ごし方はカウンセラーや医師と損談を
病院にカウンセラーがいる場合は、うつ病で休職しているときの過ごし方としてどのような方法が良いのか相談しておくと安心です。
うつ病に関することを医師やカウンセラーに教えてもらい、必要なら身近な人間が勉強して基本的なことを知っておくと誤った対応をせずに済みます。
重症のうつ病にならないように、たとえ目に見えて改善されなくても焦らずにゆっくりと治療を続けることです。
そのときの状態によって、過ごし方を少しずつ変えて様子を見てみましょう。今日はどのような過ごし方をしたのか、明日はどのような過ごし方をしようか家族など身近な人たちが一緒に考えられるようになれば、その頃には外出の機会も増えていると考えられます。
うつ病は突然良くなるのではなく、少しずつゆっくりと改善していくものです。心身の調子が少し良くなってきても自己判断で出社すると、反動で繰り返してしまう可能性が高いです。
医師の指示に従い、たとえ時間がかかったとしても気長に治療を続けます。過ごし方を少しずつ変化させることができても、周囲は表情や生活面に無理がないか注意して下さい。
本当に起き上がれないほどの状態よりも、動ける程度に改善してきたときのほうが希死念慮が強く出て危険だと言われることもあります。
自分自身が周囲に迷惑をかけていると考えるなど、自分のせいだと考えるあまり命を絶つようなことが0%とは言えません。
周囲は接し方に困ることがあるかもしれませんが、決して暴言を吐いたりせずに本人の気持ちに寄り添うようにします。人それぞれ個性があるように、うつ病と言っても症状の重さやどのような症状が目立つのか個人差があります。
本人も周囲も大変な思いをしますが、改善されてくると暗い表情に少しずつ変化が見られることがあるでしょう。散歩やウォーキングのような軽い運動をすれば外に出る機会になり、太陽の日差しを浴びることになります。
一人で外出させることがまだ心配だと思えるときは、付き添いとして身近な人が一緒に歩くのも良いです。
天気の変化や季節の変化など、忙しく働いていたときにはあまり気にしなかったことに目を向けることができるかもしれません。何か楽しいと思える趣味があり、やる気が出てきたら無理のない程度に楽しんでみるのも良いです。
世間には偏見を持つ人もいますが、うつ病は誰がかかってもおかしくない疾患です。いつもと違う状態が一定期間続き日常生活に支障をきたしたら、早めに病院へ行って相談しましょう。そしてうつ病になってしまったら、家族や職場の人間が正しい知識を持って接することが必要だと言えます。
休職中にやっておきたい書類の申請
長期の休職期間を取得する事が出来たら、まずは傷病手当金の申請を行います。
休職中は基本的に給与が出ませんが、健康保険組合に申請をする事で給与の3分の2が支給されます。
受給要件としては、
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
ですが、申請する書類は加入している健康保険組合の申請書類を使用して、医師に病状を書いてもらう必要があります。
>>うつ病で傷病手当金を受給する手順と書き方。再発したら二回目は?
また、うつ病が労災になるかどうかもしっかりと見極める事が大切です。
月に80時間以上の残業をしていたり、パワハラやセクハラなどが原因でうつ病を発症した際には労災認定される可能性があります。
何度もうつ病で休職をしたり、退職した場合
通常一度の休職期間は1ヶ月~1年程度ですが、うつ病は何度も再発を繰り返す危険性がある病気です。
一度休職をしたサラリーマンが、5年以内に再度休職をする割合はおよそ5割と言われています。
2度、3度に渡って休職をしていると、会社から退職勧告を出されたり、居ずらくなって自主退職する人も多くいます。
会社を辞める事で仕事のストレスからは解放されますが、金銭的に困窮してしまう事になります。
そんな時には障害年金の申請を行うようにしましょう。
障害年金の受給要件は、
- 国民年金(厚生年金・共済年金)に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること
※20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日があるときも含みます。 - 一定の障害の状態にあること
- 【保険料納付要件】初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
>>障害基礎年金の受給要件より引用
うつ病や躁うつ病などの精神疾患で障害年金を申請する時には、数値となる客観的指標がないので注意が必要です。
ある程度の知識を持っていないと、本来の等級の障害年金の金額を受給出来ない場合もあります。
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