近年、うつ病という精神疾患が世の中に認められてきましたが、それでもまだまだ「鬱病は甘えだ」、「仮病じゃないか」と言ったような文句を聞く場合があります。
それはどうしてでしょうか。
うつ病が仮病と言われる理由
一つには、うつ病という精神疾患は、怪我のように目に見える形では体に現れていない上、身体的な病気のようにレントゲンに異常がうつったり血液検査で悪い結果が出たりすることもないからです。
実際に不安症害やうつ病などと診断された方の中には、精神科や心療内科に辿り着くまでにいくつもの病院を巡って検査をしたのに体は健康で何も問題はないといわれたケースが多いのです。
しかし実際に呼吸困難になったり偏頭痛が出たり、動悸が酷かったり体が痛かったりする。
そして悩んだ末に最後に精神疾患を疑って病院へいき、うつ状態だと診断されることが多いのです。
検査をして数値では健康と言われる人たちですので、しんどいとか辛いとか言うと、「甘えだ」と言われてしまって更に苦しむという悪循環になるわけです。
何をもってこの人はうつ病だと診断するかは、担当した医者によると言えます。
ですから理論的には仕事に行きたくないと思っている人が、精神病院に行って抑うつ状態を演技したとしても、うつ状態であるという診断書を書いてもらえるかもしれないということです。
しかし仮病である方と実際に精神疾患である方には違いもありますから、現実的にはかなり難しいと言えます。
うつ病のふりをするのは難しい
仮病を使って会社を休もうと悪だくみする人も中にはいますが、心療内科の先生はそんなにバカではありません。
まず軽度であれうつ病に罹ってしまっている人は、生気がなくなります。
全てのことに興味がなくなるので、食事にも睡眠にも興味をしめさず人と話すことも出来なくなり、食べず眠らずでそのまま体を悪くしていってしまいます。
そこで食欲は変わらずあるし、趣味には喜んで参加するといったような人であれば、仮病を疑うことが出来ます。
そもそもうつ病になると独特のしんどさがあります。
私自身、うつ病になって8年経過していますが、体調が良い時に仮病を使う事が出来ません。
うつ病の苦しみは、健康体の時には味わえないものなので、体調がすぐれている時にその苦しみを思い出して「うつ病のふりをする」事は難しすぎるのです。
うつ病の私でさえも仮病を使う事が出来ないのですから、普通の人が出来るとは思えません。
まして、心療内科に何回も通院して、その度に先生に見破られないようにする事は普通の人には到底無理でしょう。
精神科の医師は、専門知識を備えていて、何百人、何千人と精神疾患の患者を診察してきています。
患者の表情やしぐさ、言葉使い、症状まで細かく観察しています。
うつ病と躁うつ病を誤診する医者はいても、仮病を見抜けないようでは精神科の医師は務まりません。
仮病を使う方法
しかしうつ病と偽って会社を休職する方法がないわけではありません。
それは、心療内科ではなく通常の内科で診察を受ける事です。
内科の医者であれば、うつ病患者をそんなに診ていないので、だます事も出来るかもしれません。
通常であれば、心療内科を受診するように紹介状を書かれるのですが、「内科に通院したい」と言えばそのまま仮病を押し通す事も出来るでしょう。
心療内科ではないので会社を休職する事は恐らく無理ですが、「うつ病と診断された」と言う事実を作る事は出来ます。
数日仮病を使って会社を休むことくらいは、可能だと思います。
仮病を使う事は近い未来無理になる
しかしそれも、近い未来無理になると思われます。
と言うのも、血液検査の技術が進歩して一部ではうつ病の判断が可能になってきているからです。
まだ厚生労働省が認可しているわけではないですが、PEA(リン酸エタノールアミン)と言ううつ病の指標となるバイオマーカーを調べる事で、うつ病かどうかだけでなく、どの程度重症化を判別できるようになってきています。
PEA測定がうつ病の判断基準として正式に認可されれば、仮病を使う事はもはや不可能と言えるでしょう。
うつ病の偏見もなくなる
血液検査を導入出来るようになれば、うつ病に対して「仮病だ!」と言った偏見もなくなってくるでしょう。
また、重症度を定期的に調べる事で、現在の治療が適切かどうかも判断出来るので、より早い段階での改善が見込まれると考えられています。
うつ病患者は途方もない苦しみの中で、偏見のまなざしを受けながら辛い日々を送っています。
一刻も早く、「ただの仮病だ」と言った誤った考えがなくなる事を祈っています。
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