うつ病の休職期間の目安と復職に向けたステップ

ステップうつ病

うつ病は度重なるストレスの影響で、脳内神経物質のセロトニン分泌量が低下することで発症する脳の病気です。

うつ病は治療をしっかり行うことが大切で、場合によっては休職期間を設けて入院したりする必要性に迫られることもあるのです。

確かに治療に取り組むのが大事なのは分かるけれど、長引けば解雇の心配や収入源の確保などが期になってとても、うつ病の治療に身が入らない、こんな事態も心配です。

そこでうつ病の平均的な休職期間や延長の可能性、解雇事由になるのか、収入源確保手段の傷病手当金の利用法などを御紹介しましょう。

うつ病治療に休職は有効・休職期間の平均は79日

まずうつ病ではとにかく職場を離れて休職期間を設けることは有効です。それではどの程度の休職期間が適切なのか。この点は病気の深刻度や、本人の意向や主治医の診断に会社の理解などの要素が関わってくるので、一概には言えません。

ただ、日本人のうつ病の休職期間は平均して79日間とされています。この数字の多寡をどう判断するのかは難しい問題ですが、他の先進国と比べると長い傾向があるのは確かで、ヨーロッパの2倍以上でアメリカとの比較では10倍以上とされています。

うつ病の休職期間が長くなる背景には、日本人の性格の気質的要因が影響している可能性が考えられるものの、いずれにせようつ病治療は長期戦を覚悟したほうが、最終的には良好な結果につながると言えそうです。

うつ病で休職期間をとる事は解雇事由にあたるか?

ここで気になるのはうつ病で休職期間を取ることが解雇事由にあたるのかの問題です。あるいは治療を完遂するためには延長が必要になることも考えられます。

当初の期間の休職が満了したといって、うつ病が改善するとは限らないからです。

この点の問題を解決する鍵はお勤めの会社の労働協約や就業規則に、病気で休職するときの日数が何日になっているのかを、確認することです。

休職している間の労働者の地位、もちろん就業していないのでノーワーク・ノーペイの原則で給料は支払いを受けることが出来ないのが原則です。

お勤めの会社に病休制度が用意されていれば、規定に従い一定の所得保障はされる可能性はありますが、原則給与は休んでいる間は支給されないのが基本と認識しておきましょう。

会社に他方で労働者の地位は変わりがないので、会社側は社会保険料などを支払う義務が生じます。この事実から分かるように、休職を取ることは労働者の契約に基づいて認められた権利行使に該当するので休職したからといって、解雇事由に相当するわけではないのです。

休職期間の延長をしても会社都合の解雇は出来ない

同じ理由で休職期間の延長を行っても、会社の都合で解雇することは許されないのです。確かに休職が長引けば、暗に退職を求められたり、酷い会社では不当に自発的に止めるように強制することもありますが、迎合して要求を呑むことは避けなければなりません。

しかし休職中の生活の糧を得る必要があります。もちろん貯金などを取り崩すことにもなるでしょうが、このように病気で休職のやむなきに至った場合に利用できる制度があります。

うつ病で休職中の生活費は傷病手当金を活用

それは健康保険で認められた給付である傷病手当金という制度のことです。傷病手当の申請が認められると1日あたりの平均賃金の6割が支給されます。

特にうつ病では休職期間の平均が80日近く、3か月弱の期間にわたって生活費を工面する必要があるので、傷病手当金の利用は是非、検討してほしいところです。

ここに傷病手当金とは、業務外の事由で病気休職中の被保険者本人とその家族の所得保障を行うための制度で、被保険者が病気やケガが原因で休職したときに、支給が認められます。

うつ病も精神的な病気なので、当然支給対象になるわけです。ただしこの制度を利用できるのは、社会保険に加入している方が前提です。

一般的に会社形態の事業所は健康保険の強制適用対象なので問題ないでしょうが、個人商店の従業員などが国民健康保険の場合があります。国民健康保険では利用できないので、確認しておきましょう。

ただし社会保険に加入していても、以下の要件を充たさす必要があります。つまり、業務外の自由による病気やケガであり、連続する3日間を含み4日以上就業できず、かつ会社から休業期間に対して給与が支払われなかった等、これらの要件を全て充たさなければならないのです。

ここで注意すべきポイントを抑えておきましょう。業務上の事由が原因なら労働保険の給付を請求することになる訳です。なお、就業できない(仕事に就く事が出来ない)常態か否かは医師の証明書を出してもらう必要があります。健康保険の対象なので、この証明書は300円の自己負担で出してもらえます。

連続して3日間の待機期間が必要になっていますが、この期間には祝日や土日も含まれますが、3日間連続して休職するのが要件で2日の休職に止まった場合は支給されません。給与の支払いがないことは、勤め先の事業所の社会保険担当者に申し出れば、その証明書を出してもらうことが出来ます。

事後の手続きはお勤め先の社会保険係りに相談しながら行えば問題ありません。ただし申請時期は事後申請になるので、時間が少しかかりますが焦らずじっくり書類を作成してください。

 

うつ病の休職期間の目安

うつ病が悪化すると、主治医から就労不可の診断が下されます。
休業出来る日数は通常勤続年数によって異なり、詳しくは就業規則に記載されています。

ただ、就業規則に記載されている日数は上限であり、主治医が就労可能と判断すれば復職する事になります。

うつ病はすぐに良くなると勘違いしている人が多いですが、数週間で改善する事はありません。
脳の機能が低下している状態なので、少なくても3か月は休業する必要があります。

うつ病の重症度によって、主治医が休職期間を設定しますが、あくまで目安であって、症状がどの程度回復したかによって延長する事もあります。

うつ病で休職した方が良いと主治医に言われたとき、期間をどのくらいにするかを決めなければいけません。
主治医が診察の結果から休職期間を決める事もありますが、うつ病患者に希望を聞くことも多いです。
その時に、目安にするのは3か月です。
これは、低下した脳の機能を回復させるのに最低限必要な日数になります。
これまで、大きな怪我や病気をしてこなかった人は、何か月も休職する事に戸惑い、1か月程度しか必要ないと言うかもしれません。
会社の同僚に長期的に迷惑をかける事への後ろめたさもあるかもしれません。

しかし、実際にうつ病で休職をすれば分かるのですが、1か月と言う期間はあっという間に過ぎ去ります。
休職して2週間も経過すれば残りが半分になり、復職する事への焦りや不安が押し寄せてきます。
そのような精神状態ではゆっくりと心身を休ませることも出来ず、結果として十分に回復しない状態で復職しなければいけません。

うつ病で一度休職した人が、再度休職を取得する割合は4割と言われています。
それほど、うつ病を寛解させる事は難しく、再発しやすい病気なのです。

何度も休職を重ねるよりも、3か月や6か月しっかりと心身を休めて、万全な状態で復職した方が、結果的には会社にも迷惑をかけないので、思い切って長期の休職を取得しましょう。

休職が始まったら

3か月も会社を休めば、すっかり良くなると思うかもしれませんが、うつ病はそんなに甘いものではありません。
これまで無理を重ねてきた疲労は、休職する事によって、緊張の糸が切れたように一気に押し寄せてきます。
休職が始まったら、まずはこれまでの身体の疲れを取ることに集中しましょう。
また、休職を始める頃は、うつ病の急性期に当たり、心身ともに非常に辛い状態が続きます。
精神的に不安定になり、身体が思うように動かない日も多いでしょう。
そんな時は、とにかくゴロゴロと思いっきり体を休める事が何よりの薬になります。
睡眠はしっかり取らないといけませんが、昼寝をしても構いません。
家族は疎ましく思うかもしれませんが、うつ病の急性期を乗り切るために一日中ベッドに横になるのは大切な事です。

回復期に差し掛かったら

休職して1カ月、2か月と過ぎてくると、脳の機能も回復してくる「回復期」になります。
急性期のように辛い毎日ばかりではなく、動ける日も徐々に増えてきます。
この段階になったら、少し散歩をするなどして外の空気を吸うようにしましょう。
睡眠リズムが乱れていたら、朝日をしっかり浴びて夜更かしなどは止めて睡眠リズムを整える事も大切です。
また、復職に向けて試しに通勤電車に乗ってみたり、図書館で本を読むのも良いでしょう。
回復期にしっかり体を慣らしておくことで、休職期間が終わった時にスムーズに復職が出来るようになります。

休職期間中に体調が回復しない時

うつ病は急性期・回復期・再発予防期とステップを踏むことで、克服する事が出来ますが、思うように回復しない事が多いのも事実です。
処方された抗うつ剤を飲んでいれば、自然とうつ病は治ると思うかもしれませんが、それは間違いです。
心療内科で処方されるうつ病の薬は全て対症療法でしかなく、うつ病の辛い症状を緩和する事しかできません。
うつ病を良くするのはあくまでも自然治癒力になります。
また、処方された抗うつ剤が効かない事も良くあります。

抗うつ剤は対症療法

何種類か抗うつ剤を変えていく事で、あなたに合った薬を見つけていくのですが、どの薬も効果が出ない可能性もあります。
具体的には、うつ病で低下する神経伝達物質は「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」の3種類と言われていますが、抗うつ剤が効果を発揮できるのは「セロトニン」と「ノルアドレナリン」だけです。
そのため、もしもあなたのうつ病が「ドーパミン」の減少によるものだとしたら、現在厚生労働省が認可している薬では効かない事になります。

そんな時は、焦らずに少しずつ回復させていく必要があります。
3か月の休職期間を延長して、半年、1年と気長に治療していく必要があります。
「そんなに長い期間休めない」と言うかもしれませんが、うつ病を10年以上患っている人は本当にたくさんいます。
芸能人の武田鉄矢さんは20年間うつ病と戦ったそうです。
「その人たちに比べたら1年くらい大したことない」と言う気持ちで、気長に治療をしていきましょう。

抗うつ剤で効果が出ない時

抗うつ剤を半年、一年と飲み続けてもうつ病が回復しない時は、電気けいれん療法を受ける事を考えた方が良いでしょう。
現在、厚生労働省が認可している治療の中で、ドーパミンを増やす事が確認できているのは唯一電気けいれん療法だけです。

うつ病は再発させない事が大切

うつ病は再発させると、症状は以前よりも悪化しますし、更に再発のリスクが高くなります。

一度うつ病で休職したサラリーマンが5年以内に再度休職を取得する割合は、5割近くと言われていますし、再発時の休職期間の平均は初めに取得した日数以上になるというデータもあります。

とにかく、どれだけ長くなっても良いので、一回の休職期間中に治すことが大切です。

 

うつ病を何度も再発させてしまったら

私自身がそうなのですが、仕事で無理をしてうつ病を何度も再発させてしまっていました。

その結果、どれだけ休養を取っても、全く良くならない状態になってしまいました。

電気けいれん療法を2度受ける事でようやく改善の兆しが見えてきましたが、「うつ病はとにかく恐ろしい病気」と言うのが私の率直な感想です。

もしも何度もうつ病を再発させてしまい、生活費を稼ぐことが出来なくなった場合には、障害年金の受給を検討して下さい。

障害基礎年金なのか、障害厚生年金なのか、あるいは等級や家族構成によっても支給される金額は異なりますが、障害厚生年金2級であれば最低限生活をするだけの金額を受給する事が出来ます。

「精神障害者」と言う響きは未だに違和感があり、自分がそうなってしまったことに対して不甲斐ないという気持ちもありますが、お金に困窮して家族を路頭に迷わさずに済んでいる事に対しては、本当にありがたいと感じています。

生きていれば人生は何度でもやり直しが出来ます。

焦らず少しずつ治していきましょう。

コメント