多くのうつ病患者は、最初の抗うつ薬単独療法に十分反応しない。
そのため、次の治療手段として、投与されている抗うつ薬の増量(漸増、高用量)がしばしば行われる。
オーストリア・ウィーン医科大学のMarkus Dold氏らは、うつ病への抗うつ薬の増量について二重盲検無作為化比較試験のメタ解析を行った。
Psychotherapy and psychosomatics誌2017年号の報告
メタ解析には、標準用量の抗うつ薬で治療反応が不良であったうつ病患者を対象としている、抗うつ薬増量療法と標準用量継続療法を直接比較したすべての二重盲検無作為化比較試験(RCT)が含まれた。
主要アウトカムは、HAM-D総スコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、治療反応率、全原因による治療中断、無効、副作用とした。
Hedges gとリスク比は、エフェクトサイズとして計算した。
主な結果は以下のとおり
- 7つの二重盲検RCT(8アーム)より、1,208例が抽出された。
- 内訳は、fluoxetine 2件(448例)、セルトラリン2件(272例)、パロキセチン2件(146例)、デュロキセチン1件(255例)、マプロチリン1件(87例)であった。
- 抗うつ薬増量療法は、標準用量継続療法よりもHAM-D総スコア低下において有効ではないことが、プールされた抗うつ薬群(7件、999例、Hedges g:-0.04、95%CI:-0.20~0.12、p=0.63)と個々の抗うつ薬群のどちらでも認められた。
- 治療反応率、全原因による治療中断、無効による脱落について、差は認められなかった。
- 抗うつ薬増量療法の患者では、標準用量継続療法の患者よりも、副作用による脱落が有意に多かった。
- メタ回帰分析では、ベースラインの症状重症度やエフェクトサイズに対する用量増加の影響は示されなかった。
著者らは「メタ解析の結果から、初回の抗うつ薬治療において標準用量で治療反応が認められない患者への抗うつ薬増量療法は、うつ病に対する一般的なエビデンスベースの治療選択肢としてみなされない」としている。
抗うつ剤に反応するうつ病は意外に少ない
うつ病になったら、「抗うつ剤を飲めばよくなる」と思っている人が多いと思いますが、実際にはそんなに簡単に治るものではありません。
半分の人は抗うつ剤の反応性が悪く、薬の量をどんどん増やしたり、変えたりしていきます。
しかし、効果が出ないばかりか、副作用に悩まされることも多いのが現状です。
今回の研究も、抗うつ剤の反応性が悪かったうつ病患者に対して行われたもので、副作用による脱落者が多かったとなっています。
そもそも、抗うつ剤の役割は、「うつ病を治す」ものではありません。
あくまで、うつ病の症状を緩和させる対症療法に過ぎないのです。
しかし、この対症療法にはしっかり意味があって、効果を発揮してくれると、心身や脳の自然治癒力を引き出してくれるのです。
そのため、うつ病は少しずつですが回復に向かいます。
現代の薬学では、抗うつ剤に反応しないうつ病患者はどうしようもないのです。
日本には100万人以上のうつ病患者がいると言われていますが、そのうちの半分50万人は抗うつ剤では効果があまり出ないのです。
抗うつ剤を何年も服用して、それでも全く改善しない場合は、電気けいれん療法やTMSなど外科的な治療方法を試す必要があるのではないでしょうか?
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