双極性障害(躁うつ病)とは
双極性障害(躁うつ病)は気分障害と言われる精神障害です。
うつ病では抑うつ状態だけですが、双極性障害では気分がハイになる躁状態と、気分がふさぎこんでいる時のうつ状態とが交互に現れる難治性の精神疾患です。
精神障害と言うと、特別な人のようにとらえがちですが、躁状態でもうつ状態でもない時には、病気でない人とどこも変わりがないのも特徴です。
双極性障害の発症年齢は、30歳前後が平均とされていますが、中学生から高齢者まで、さまざまな年齢で発症します。
双極性障害はⅠ型とⅡ型に分ける事が出来て、躁方向への気分の変化が「躁状態」に至るものを双極性障害Ⅰ型といい、「軽躁状態」にとどまるものを双極性障害Ⅱ型といいます。
双極性障害Ⅰ型の確定診断は比較的容易に出来ますが、双極性障害Ⅱ型では躁の状態が軽いためにうつ病と誤診される事も多いのが現状です。
しかし、薬物療法が主流の双極性障害において、うつ病と双極性障害とでは処方される薬が違うために、誤診されているといつまで経っても症状が改善しない事になります。
そのため、うつ病と診断されて治療を受けているにもかかわらず一向に改善する気配がない場合には、操の状態がないかを自分で思い返してみる事も大切です。
ギャンブルに全財産をつぎ込んだり、高額の買い物をしたり、上司に喧嘩を売るというような社会的信用や財産、職を失ったりする激しい状態があれば、双極性障害の可能性が高いと言えますが、単に楽観的になり頭の回転が速く、生産性が向上するといった、誰でも経験するような些細なそう状態の可能性もあります。
双極性障害の有効な治療方法としては、薬物療法以外に、電気けいれん療法やTMSなどがありますが、適切な治療を施しても改善しないケースもあります。
双極性障害も一定の障害レベルになると、通常の社会生活や日常生活を営むことは困難であるために、経済的に困窮する事が多くあります。
そう言った場合のライフラインの一つとして障害年金があります。
双極性障害における障害年金の現状
精神疾患による障害年金の申請は年々増加の一途にあります。
21世紀に入り、うつ病に罹患する患者さんが激増し、リーマンショックなどの影響もあり自殺者が後を絶たない状況です。
しかし、うつ病もそうですが、双極性障害で障害年金を受給するにはなかなか認定が下りないという声も多く聞きます。
精神疾患の中でも統合失調症であれば認定もスムーズだと言われていますが、精神状態としては似通った部分も多く、診断も医師の判断により異なるため、整合性を求める意見もあります。
双極性障害における障害年金の受給要件
双極性障害における障害年金の受給要件は、下記の通りです。
1 | 国民年金(厚生年金・共済年金)に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること ※20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日があるときも含みます。 |
2 | 一定の障害の状態にあること |
3 | 保険料納付要件 初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。 (1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること (2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと |
この中で2の「一定の障害の状態にあること」をどのように証明するかが、障害年金を受給できるかどうかのカギとなります。
双極性障害により障害年金が受給できるケースとしては、
- 日常生活が一人で送るにはほぼ困難な状態であること。
- 何も手につかないなど、日常生活が著しい制限を受けていること。
- 長期の安静が必要な状況であり、生活に著しく支障があること。
- 働くことができないか、退職し仕事へ復帰が難しい状態であること。
などがあげられます。
障害年金を申請する上で抑えておくべきポイントとしては、「日常生活」と「就労」があります。
日常生活の捉え方
障害年金を申請する際に、「取りあえず書類を集めて申請すれば良い」と考えるのは危険です。
ご自身の日常生活をどのように書類に反映するかによって、受給できるかどうかが変わってきます。
直近半年間の間で、入院をしているケースなどでは、受給もしやすいと言えます。
就労の捉え方
一般就労で勤務出来ているケースでは、障害年金3級の受給すら難しいと言われています。
逆に、休職中であったり退職後であれば、「働くことが困難な状態」と客観的に判断しやすいので、受給しやすくなると言われています。
双極性障害における障害年金1級~3級の認定基準
双極性障害に限らず精神障害全般において、障害年金の認定基準は下記の表のようになっています。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。→他人の介助を受けなければほとんど、自分のことは何もできない程度のもの。 |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。→必ずしも他人の助けを借りないといけないことはないが、日常生活は極めて困難で、就労により収入を得ることができない程度のもの。 |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。→労働がぎりぎりできるかどうかくらい。 |
障害手当金 | 「障害が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。 |
1級該当者というと単身生活や人との関わり、金銭管理、その他社会生活を一人でこなすことができないほど重篤なイメージですね。
また年金受給の対象でなくても、寛解された人には障害手当金という3級年金額の2年分ほどが受給できる制度「障害手当金」もあるのです。
しかし、障害年金には、初診日の段階で国民年金に加入していた人が受給できる「障害基礎年金」と、厚生年金・共済年金に加入していた人が受給できる「障害厚生年金」の2種類があり、障害基礎年金では障害年金3級はないので注意して下さい。
また、H28年より精神障害の審査基準ガイドラインが審査に運用されています。障害厚生年金の審査は1か所で行われているのに、障害基礎年金の審査は都道府県ごとなのが地域格差として問題視されたため統一化するマニュアルができました。
これまでは都道府県によって、障害基礎年金の受給がしやすい県と、しにくい県がありましたが、今後はそう言った不公平感はなくなっていきます。
こうやってあげてみると、診断基準は、はっきりしているようで曖昧な印象です。生活上の困難さと生きづらさがメインとも言えますが、目に見える身体障害とは違い、数値で計れる知的障害とも違い、傍目にはしっかりした人と見えても内的な危うさを抱えた障害なのですね。
双極性障害における障害年金1級とは
双極性障害で障害年金1級を受給するのは、ほぼ皆無といっても過言ではありません。
例えば障害年金1級に該当するのは相当長い間病状が変わらず、長期入院を余儀なくされているケースとか、ほとんど家から出れず引きこもりお風呂に入ることもできない重篤なケースを除いては、1級になる事はないと言えます。
双極性障害における障害年金2級とは
障害基礎年金では3級がないために、目指す等級は2級になります。
また、障害厚生年金においても、2級と3級とでは全く金額が異なります。
そのため、多くの双極性障害の人が目指すのは障害年金2級と言えるのですが、ハードルはかなり高いのが現状です。
社労士など専門家に相談する人も多いですが、一部の社労士を除き、ほとんどは本人に代わって書類を集めて提出するだけなのが現状です。
また、年金事務所に相談するのは必須と言えますが、年金事務所ではどうすれば2級に該当するかというのは絶対に教えてくれません。
ノウハウは確かに存在するのですが、それを教えると不公平になってしまうからです。
基本的に精神障害における障害年金受給マニュアルは、うつ病も双極性障害も同じと考えて大丈夫です。
手間はかかりますが、ご自身でノウハウをマスターして、書類を作成するのが結局は一番の早道と言えます。
双極性障害における障害年金3級とは
障害年金3級の場合は過去就労をしていて、初診日に厚生年金もしくは共済年金に加入している人のみが対象です。
学生や専業主婦の方は、障害基礎年金の対象となるので、3級はありません。
障害年金3級の場合はある程度の日常生活・社会生活が安定しながらもまだ経過観察の必要な人と言えます。
そのため、双極性障害で障害年金3級を受給するのはさほど難しい事ではありません。
双極性障害というのは、状態の波も大きく安定していないため素人判断ではわかりづらいですが、主治医にしっかりと病状を診断書に記載してもらう事で十分受給する可能性が高くなります。
双極性障害の傾向
精神疾患は平静の5大疾病の一つと言われています。双極性障害の人が障害年金1級と診断され社会生活がとても困難であるということは、常にジェットコースターに乗っている気分でしょう。
周りもかなり巻き込まれ疲弊します。治療は本人だけでなく家族のケアも大事な視点となります。
また、うつ病と異なり、躁の状態があるために、逆に周囲の理解が得にくいのも双極性障害の特徴です。
障害年金3級であれば無理のない程度に仕事もし、年金は生活費の足しやいざという時の貯蓄として頼っていけば良いかと思います。
双極性障害の生きづらさは統合失調症やうつ病より困難なのかと思われます。
実際双極性障害の当事者の方と接することがありましたが、ハイテンションの時には人に物をあげたがったり、しつこく押しかけたり、散財するなどすさまじい勢いで爆走します。
しかし、それは長く続かずまるで人が変わったかのように暗くふさぎこみ誰も寄せ付けない負のオーラを放ちだします。
こうなると怖いのが自殺念慮です。薬を多飲したり、線路に飛び込んだり、未遂した後もチャレンジしようとします。
双極性障害の人にはもう誰の言葉も響きません。入院し投薬治療とリハビリで回復していくしかないのでしょう。
双極性障害の人はたいてい華やかな一面を持っています。躁の時にはその華やかさが全面に出て、不眠不休で活動します。
でも本当は疲れ果て休みたいのだと感じます。双極性障害への理解を啓発するとともに、医療への連携の大切さを感じます。
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