うつ病の人は本当に苦しい時に「助けてくれ!」と周囲に訴える事があります。
しかし、残念ながら助けを求めても信じてもらうのは難しく、例え信じてもらえたとしても、助け方が分からないと助けようもありません。
では、どうすれば信じてもらって、どんな事であれば助けてもらえるのかをご説明します。
うつ病の「助けて」が届かない理由
まず、ほとんどの人がうつ病であるあなたの声を信じていません。
その理由として、
- 助けて!」と言うほど苦しいとは思っていない
- うつ病の辛さが分かっていない
- うつ病自体がそんなに深刻な病気だとは知らない
- 四六時中「助けて」と言っているので、信ぴょう性がなくなる
- うつ病は気の持ちようだと思っている
と言うのがあります。
うつ病の辛さが分かっていない
うつ病になった事がない人は、うつ病の辛さを理解できません。
人は、過去の経験からでしか想像する事が出来ない生き物なので、過去に経験した事がない壮絶な苦しさは理解できないのです。
これは、軽度のうつ病になった人にも当てはまります。
「自分は、うつ病だったけれど、そんなに大袈裟に助けを求めるほどの辛さではなかった。」
となり、理解してもらえないのです。
「助けて!」と言うほど苦しいとは思っていない
うつ病が苦しい事を理解している人はある程度いますが、助けを求めるほど苦しいとは考えていません。
会社でいうと、総務や人事担当の人は、うつ病に関してかなり知識が豊富です。
うつ病社員のケアをしたり、無理なく復職させたり、新しく精神障害者を雇用する機会などうつ病の人と接する事が多いですし、メンタルケアと言った社内研修なども受けているからです。
しかし、彼らでさえも半年ほど休職をして、ステップを踏めば、必ず復職する事が出来ると考えています。
うつ病の苦しさはその程度にしか考えていないのです。
うつ病自体がそんなに深刻な病気だとは知らない
うつ病は自殺率が10人に1人程いると言われています。
希死念慮が強くなったり、将来に希望が持てなくなったり、うつ病の苦しさに耐えられなくなったりして自殺をします。
それほど恐ろしい病気なので、重度のうつ病になった人は「心の風邪」なんていう言葉は絶対に使いません。
「うつ病は心の癌」と言う風に表現します。
実際は、心の病気ではなく脳の病気ですが、死ぬ可能性が高い事も含めて、恐ろしさを伝えるには癌と言う言葉が最適だと私も考えています。
四六時中「助けて」と言っているので、信ぴょう性がなくなる
家族に多いのが、このパターンです。
家にずっといて、何もしていないのに、四六時中「助けて」と言っているのを聞いていると、「またか・・・」となってしまいます。
それを通り過ぎると、「いい加減にしろ!」と怒られるようになります。
うつ病は24時間365日苦しい病気なので、常に助けを求めたいのが、うつ病本人の気持ちです。
それを我慢して、時々言葉にしているだけなのですが、家族にしてみればうんざりする程聞き飽きているのです。
うつ病は気の持ちようだと思っている
うつ病を全く理解していない人は、「うつ病は気の持ちようだ」と言います。
「うつ病は心の風邪」などと言う、抗うつ剤をたくさん飲んで欲しい薬品メーカーの宣伝文句が一般化してしまった事が大きな要因の一つです。
「助けてくれ!」と言うと、「気合を入れて、シャキッとしろよ!そうしたらうつ病なんか吹っ飛ぶんだから!」と叱咤されます。
知らないの事は罪です。
「助けてくれ」を信じてもらうために
うつ病の「助けてくれ!」と言う言葉を信じてもらうためには、医学的かつ論理的に説明する事が大切です。
感情論をいくら振りかざしても、よほど優しい人でない限り相手も感情的に否定するだけなので、止めた方が良いです。
医学的なうつ病とは
医学的にうつ病は「脳の病気」です。
ストレスが原因で脳内の神経伝達物質(脳内ホルモン)バランスが崩れています。
特にうつ病の症状と大きくかかわっているのが、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンになります。
セロトニンの働き
セロトニンは気分・感情に大きく関与しています。
セロトニンが正常に分泌されていると、ストレスがかかっても不安や怒りをコントロールする事が出来ます。
しかし多くのうつ病の人は、セロトニンが減少しているので、感情をコントロールする事が出来ません。
また、セロトニンは夜になると、メラトニンと言う物質に変化して睡眠をコントロールする働きもあります。
うつ病の人がやたら不安症になったり、イライラして感情のコントロールが効かなかったり、不眠症になったりするのには医学的な理由がちゃんとあるのです。
ノルアドレナリンの働き
ノルアドレナリンには、
- 脳の覚醒
- 心拍数を上げる
- 血圧の上昇
- 判断力向上
- 注意力向上
- 集中力向上
- 筋肉などの機能向上
- 記憶力の向上
と言った効果があります。
うつ病になると、集中力や判断力・注意力が低下するのは主にノルアドレナリンが減少しているからです。
仕事が以前みたいに出来ないと言う人は、脳内ホルモンの中でもノルアドレナリンの減少が大きいのかもしれません。
仕事が出来なくなると、会社での評価はおのずと下がります。
つまり、「しんどい」「辛い」「助けて」と言っている割に、仕事も出来ない能無しだとレッテルを貼られます。
これは家庭内でも同様で、食事を作る時には食材をどのように切って、どんな順番で調理をすれば良いかと言った判断が鈍くなってきます。
主婦にとっても、サラリーマンにとっても、ノルアドレナリンが減少する事で被る被害は想像以上に大きいと言えます。
ドーパミンの働き
ドーパミンが減少すると、運動や学習機能が低下します。
体がスムーズに動かなくなったり、物覚えが悪くなったりします。
うつ病になると、トイレに行ったり、お風呂に入ると言った単純な行動さえも体が重くて出来なくなりますが、原因は主にドーパミンの減少によるものです。
「助けて」を相手に伝えて行動してもうらには
うつ病の人の「助けてくれ」と言う切実な訴えを相手に伝えるためには、普段からうつ病とはどんな病気なのかを伝えた方が良いでしょう。
症状が強く出ている時に、細かい説明をするのは困難ですし、人は泣き言を言っている人の話を真剣に聞こうとはしません。
また、「助けて」と言うのは抽象的過ぎて何をすれば良いのか相手は分からずに混乱します。
普段から「私はうつ病で、こんな症状があるけれど、それは神経伝達物質が減少しているから。
今は大丈夫だけど、私が助けを求めたら、頓服を持ってきたり何も言わずに数時間ベッドで横にさせて欲しい」と論理的かつ具体的に説明する事が大切です。
そうすれば、普通の人であれば、あなたが「助けて!」と言った時に行動してくれます。
それでも助けてくれない人は
世の中にはそれでも助け船を出してくれない人がいます。
頭ごなしに、うつ病は甘えだと決めつけている人は、何を言っても耳を貸そうとはしません。
そのような人に助けを求めても裏切られて、傷つくだけなので、何も言わない方が得策です。
普段からあなたの味方を作っておく
あなたが助けて欲しいと願うのであれば、会社や家での普段の態度や行動が大切になってきます。
家族であれば、可能な限り病院へ同行してもらい、主治医から直接症状や状態を話してもらう事で、あなたうつ病に対する理解も深まります。
恋人であれば、元気な時にコミュニケーションをしっかりとっておきましょう。
誰しもlineやメール、電話などが何週間も来なくなると不安になります。
しかし、前もってそのような状態になるかもしれない事を伝えておくだけで、相手も安心しますし、あなたも治療に専念出来ます。
会社の同僚や上司に対しても、同じように説明しておくと、体調が悪くなって休みを取りたい時に理解してもらいやすくなります。
逆にきちんと普段から説明をしていないと、周りは「仕事も出来ないくせに、休んでばっかりだ!」と誤解をして、会社に居づらくなるので注意して下さい。
頓服を手の読くところに置いておく
うつ病で本当に苦しくなると、薬を取りに行く事すら困難な時があります。
頓服を飲めばある程度落ち着くことでも、飲まない事で更に苦しみます。
そう言ったことを避けるためにも、頓服に関してはいつでも手の届くところに置いておきましょう。
子供がいると、そこら中に置いておくことは出来ませんが、子供が手の届かない高い場所に置いておくことで、助けを求める時に役立ちます。
また、ご家族にも頓服の場所や効果を伝えておきましょう
あなたが「助けて!」と言ったら、ご家族の方でも薬と水を持ってきてもらえるように出来ていれば安心です。
うつ病の相談機関も活用
また、外部の相談機関に電話出来る事も知っておきましょう。
いのちの電話や通院している病院のなどの連絡先を控えておくことで、最悪の事態を避ける事も出来ます。
助けを求める事は悪いことではありませんが、やみくもに叫んでも誰の心にも届かないのが現実です。
普段から味方を作り、感謝の言葉を伝えておくだけで、あなたが助けを求めた時に、力になってくれますよ。
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