昔と今の電気けいれん療法の違い|パルス波による最新のECT

心療内科での治療うつ病

電気けいれん療法は今と昔ではそのやり方が大きく変化してきています。
その大きな要因として、今と昔での医療環境が大きく変わってきたことが影響していることは間違いないでしょう。
電気けいれん療法が始まったのは1930年代でした。
当時は医師が言うとおりに治療が進み、患者の疑問や希望は全くといっていいほど考慮されないような時代でした。

現在ではそのような環境は一変し、患者の権利意識も高くなり、医師は病気やその治療について一つ一つ説明が求められると同時に、治療に対してもそのリスクや起こりうる合併症など、事前に十分な説明が求められるようになりました。
電気けいれん療法の開始された当時は、有無を言わさず麻酔もなしでいきなり治療されることも多かったようでその点では大きく現在とは異なっています。

 

そのような医療環境から、電気けいれん療法のやり方も大きく変わってきています。
また、けいれんを起こす器具なども変化してきており、昔とは大きな違いが認められるようになっています。

では具体的のどのような違いがあるのか、見てみましょう。

昔の電気けいれん療法「木箱」

昔の電気けいれん療法は患者がまとめて処置室に目隠しして集められ、目隠しを外して覗こうとすると制止されるうえ、説明も麻酔などもなくいきなり電気刺激を与えられて全身けいれんが引き起こされるような治療が行われていました。
患者は声をあげてうなったり、時にはけいれんしたことによる骨折などの外傷が起きたりと、今の医学的常識からは少し考えにくいほど管理が悪いものでした。
もちろん時代が違いますので一概には言えませんが、当時の精神科医の中でも電気けいれん療法を中止すべきと考える医師もいたようです。

最新の電気けいれん療法「サイマトロン治療器」

さらにけいれんを起こすための電気刺激装置も今とは異なっていました。
電気刺激の方式としてサイン波とパルス波という2つの方式があります。
サイン波はいわゆる我々の生活している電線を流れているような電流のサイン波を人に流す方式です。

パルス波は短時間の電気刺激を連続して与える方法です。
現在ではこちらの方が安全であり、パルス波を使用することが医学的には正当性があります。
サイン波はけいれんを起こすという点においてはパルス波よりはより効果的と一部ではいわれています。
しかし電気けいれん療法の最大のリスクである循環系の副作用、場合によっては心臓が停止する、記憶障害、その副作用の頻度がパルス波と比較すると高くなります。
さらに治療後の認知症状、すなわち物忘れが激しくなるなどの副作用その頻度が多くなることが知られています。

日本で電気けいれん療法が始まったころの時点で、海外ではすでにパルス波を使用している国が多かったにもかかわらず、日本ではサイン波が多く使用されていたのです。
このような状況は社会的な患者の権利を認めるべきという社会風潮の変化だけでなく、精神科の医師や学界からも改めるべきとの提言がなされるようになりました。
当時の厚生省もサイン波ではなく、パルス波を用いた電気けいれん療法の機械の使用を認めサイン波の使用は徐々に行われなくなりました。
さらに電気けいれん療法に関してもより安全に行うように変化してきています。

 

電気けいれん療法の動向

1990年代から、電気けいれん療法の倫理的問題を考えて行うこと、またより安全に行うことの重要性が日本精神神経学会を中心に進められるようになりました。
現在、日本では修正型電気けいれん療法と呼ばれる方法が行われています。
その方法としては、まず電気けいれん療法を行う場合には患者への説明をしっかり行うことが求められています。
具体的にはどのような治療でどのような効果が期待できるか、その反面、どのような副作用が起こりうるものなのかなどを伝え患者が同意したうえで行うことです。

さらに循環器系への負担が大きな治療である為、治療前の心電図などの検査をしっかりと行い治療に問題がないかなどの術前評価を確実に行うことなどです。
そのうえで問題ないとされたら、電気けいれん療法を行う時には全身麻酔をかける、体のけいれん症状を引き起こさず神経の電気刺激だけが与えられる状態を作り出すため筋弛緩剤も併用します。
また先ほど述べたパルス波を用いた電気刺激を使用することなどがすすめられました。

これによりけいれんを起こして骨折する、あるいは脱臼するなどのけがを予防できると同時に患者への安全性への配慮が昔と比べると非常に向上しました。
ただし、全く安全というわけではありません。全身麻酔をかけて人工呼吸を行うこと自体にそれなりのリスクを伴います。その点でも術前の十分な説明は重要になってきます。

電気けいれん療法はこのように今と昔では非常に変化してきて、より安全に行うようになってきています。
電気けいれん療法はどうして効果があるのかの詳細は分かっていませんんが、臨床現場ではその効果を実感することも少なくありません。
治療を行う側の精神科医に対してもより安全、確実にできる知識と経験を持つ医師を養成するための講習会や研修会が行われるようになっています。

電気けいれん療法はパルス波治療器を選ぶ

実際に電気けいれん療法を受ける事になった時には、パルス波治療器「サイマトロン」を使用している病院を選びましょう。
記憶が一時的にでもなくなることは、患者にとって恐怖体験になります。
記憶がなくなっている状態で電気けいれん療法を受け続ける事は、精神的に負担が大きく、時には継続できない事にも繋がります。
日本精神神経学会や厚生労働省でも、パルス波治療器を推奨しています。
より、安全性が高く脳への負担が少ない治療を選びましょう。
うつ病コミュニティ【Serapis】では、パルス波治療器を実施している病院探しもお手伝いしています。
首都圏などはある程度リストがそろっているので、そこから選ぶのも良いでしょう。

ご質問がある方は、いつでもコメントださいね。

電気けいれん療法を受ける前後に必ず障害年金の申請を

パルス波の電気けいれん療法を受ける事を決意されたときに、注意点があります。

それは、障害年金の申請をする事。

正直電気けいれん療法を受ける程うつ病の症状が悪化している中で、障害年金の複雑な書類作成を行うのはかなり大変です。

しかし、症状が悪化しているからこそ、障害年金は受給しやすい状態ともいえるのです。

電気けいれん療法を受ける際には入院を1か月半程度する必要があるのですが、入院歴があると障害の程度が深刻と判断されやすいのです。

ご自身で申請をする事が困難であれば、ご家族の方にお願いするのも良いでしょう。

むしろ、ご家族の方が障害年金の申請をすすめる事が一番受給しやすいとも言えます。

また、障害年金の専門家は社労士のために、精神科の医師はその判定基準を理解していません。

本来であれば、うつ病の障害年金申請を専門にしている社労士に依頼をするのがベストですが、金銭的にかなりの負担になります。

そこで、障害年金1級を受給している私が申請のポイントを教えていますので、是非ご活用して下さい。

>>うつ病で障害年金を受給する記事はこちら!

コメント

  1. […] また、厚生労働省や日本精神神経学会が推奨しているのは従来の「サイン波」ではなく、パルス波を用いた電気けいれん療法で、記憶障害のリスクが少ないのが特徴です。 現在、日本では1000以上の病院で電気けいれん療法が実施されていますが、約4割は体にけいれん発作を起こさせる従来の電気けいれん療法です。 骨折などのリスクを減らした修正型電気けいれん療法を受けられる病院を選ぶことは、うつ病患者にとって大切な事です。 治療前には内服薬の服用などについて指導が必要になります。 受診したいクリニックなどが見つかったら、主治医に相談して事前に予約を入れて起きましょう。 人気のある施設では数ヶ月先まで待たされる可能性もあります。 電気けいれん療法は妊婦や高齢者など体力面に問題があったり、薬物治療を継続できない症例でも適応になります。 身体的に薬物療法を継続できない症例でも、症状の劇的な好転につながる可能性があるので、実施数はこの先増加することも見込まれます。 […]

  2. […] また、記憶障害に関しては修正型電気けいれん療法やパルス波治療器を使用した電気けいれん療法を選択する事でリスクを減らせることが分かっています。 […]