自殺率は一般人の25倍!? 「躁うつ病」の“うつ”に効く新薬「ビプレッソ」が登場

抗うつ剤うつ病

 躁とうつを繰り返す双極性障害(躁うつ病)は治療が困難とされてきた。その理由の一つは、うつのときに抗うつ薬を飲んでも満足に効かないことだ。しかし、今年10月、双極性障害のうつに効果が期待される新薬が登場した。

 双極性障害は、以前から「躁うつ病」という病名で知られていたが、最近では二つの極を揺れ動くという意味でこう呼ばれている。躁状態が顕著で激しい双極I型障害(I型)と軽躁状態しかない双極II型障害(II型)に分類される。一生のうちに罹患する割合はI型、II型合わせて1%弱とみられ、大きな男女差はない。

 原因はいまなお不明だが、理化学研究所の加藤忠史医師らは、2006年に脳の活動に必要なエネルギーをつくりだすミトコンドリアの機能障害と関連する可能性があると報告した。こうした遺伝的要因にストレス、生活リズムの乱れなどが加わると発症しやすくなると考えられている。加藤医師はいう。

「I型の場合、激しい躁状態に入ると、周囲の人々が『まるで人が変わったようだ』と驚くほど性格や言動が変わってしまうのが特徴です。高揚感、万能感に満ちあふれ、ろくに寝ないで行動し、無謀な事業に手を出したり、投資やギャンブル、酒場での豪遊、買い物などに大金をつぎ込んだりします。また、高揚感を通り越して焦燥感にかられ、わけもなくイライラして当たり散らしたりすることもあります」

 周囲の人々がこうした異常な言動をいさめると、本人は「これが自分の本来の姿であり、正しいことをしている」と信じているため激高し、反論したり暴力をふるったりする。巻き込まれた家族や同僚はとても耐えきれず、家庭生活や社会生活が破たんしかねない。

 一方、うつ状態に転じると、躁状態のときに周囲の人々にかけた迷惑や不始末への後悔も相まって、自殺を図ることもある。実際、双極性障害の患者の自殺率は一般人口の25倍以上、うつ病の約2倍と高い。

 双極性障害では躁状態よりうつ状態の期間のほうが長く、患者が受診を考えるのも主にうつ状態のときだ。しかし、うつ病を疑って受診した患者の約6人に1人が双極性障害であったという報告もある。特に軽躁状態しかないII型の場合、うつ病と区別がつきにくい。

 治療上の問題点の一つは、既存の抗うつ薬を服用しても、うつ症状の十分な改善が望めないことだ。これは双極性障害が躁状態とうつ状態を繰り返すことを特徴とする病気であり、うつ病とは発症メカニズムが異なるためと考えられている。患者の約半数が、2年以内に再発するという再発率の高さも問題だ。

 今年10月、「双極性障害におけるうつ症状の改善」を適応(健康保険で使用が認められた病気・症状)とする治療薬「ビプレッソ」が発売された。これは、もともと統合失調症の薬として開発された「非定型抗精神病薬」の一種であり、双極性障害のうつ症状(双極うつ病)に効果が期待される。加藤医師は、ビプレッソが発売された経緯をこう指摘する。

「海外では、以前からビプレッソの成分であるクエチアピンを配合した薬が双極うつ病に使われていました。日本うつ病学会双極性障害委員会が12年に発表したガイドラインでも、この薬が双極うつ病に対する第一選択薬の一つに挙げられています。この薬は1日2~3回服用する必要がありましたが、ビプレッソは1日1回の服用ですむよう改良したものです。国内の治験により双極うつ病に対する有効性・安全性が確認され、健康保険で使えるようになりました」

 薬の作用に身体をならすため、50ミリグラムから服用を開始し、2日以上間隔をあけて150ミリグラム、300ミリグラムと増量していく。主な副作用には血糖値の上昇があり、糖尿病患者には慎重に投与する。また、眠気の副作用があるため就寝前に服用し、車の運転は避ける。

 双極性障害の薬物療法の基本は、リチウム、ラモトリギンなどの気分安定薬を服用し、気分が大きく変動するのを抑えて再発を防ぐことにある。ビプレッソも、気分安定薬を服用したうえでうつ症状が改善しない場合の選択肢となる。

 NTT東日本関東病院の秋山剛医師は、「双極性障害は再発予防のための治療法が確立しつつあり、症状のコントロールや普通の社会生活を送ること、復職(リワーク)は十分に可能です」という。そのためには、社会リズム療法(SRT)の考えかたに基づき、活動記録表に毎日の起床時間、食事時間、服薬時間、活動内容と時間帯、その時々の気分、就寝時間などを記録することが大切だ。

 この活動記録表をもとに日単位、週単位、月単位、年単位で気分変動の傾向を把握して薬の処方計画を立て、必要に応じて見直していく。また、活動記録表は患者自身が気分変動のきっかけとなるサインに気づき、生活習慣を是正するうえでもきわめて有用だ。

「社会生活に大きな影響をおよぼす躁状態は、うつ状態より短い時間で進みます。患者さんは、うつ状態が改善されると予定を入れ、予定をこなすとその刺激で気分がさらに高まり、また新しい予定を入れるという繰り返しで躁状態が強まることがあります。これを避けるためには、活動記録表で普段より起床時間が早くなっている、日中の活動時間が増えているといった躁症状の始めのサインに早く気づくことが大切です」(秋山医師)

 薬がうまく効かない場合、脳の神経に電気刺激を与える通電療法も有効な選択肢となりうる。通電療法は、かつて「電気けいれん療法」と呼ばれ、安全性が懸念されたこともあるが、精神科のある総合病院で適切におこなえば安全に効果が期待できるという。

 双極性障害は治療が難しく、再発しやすいとされてきたが、最近ではこのように治療の選択肢が増えてきた。それだけに、双極性障害を専門とする医師を受診することが望まれる。秋山医師はいう。

「長期間、抗うつ薬を服用しているにもかかわらず、症状が改善しないという患者さんは軽躁状態のみを伴うII型である可能性があります。その場合、ネットで日本うつ病学会双極性障害委員会のメンバーやうつ病リワーク研究会会員の医療機関、日本精神神経学会の専門医を調べ、受診されることをお勧めします」

 また、加藤医師は身近に激しい躁状態を起こした家族や同僚をもつ人々に次のようにアドバイスする。

「地域の精神保健福祉センターに適切な医療機関を紹介してもらい、ご本人のプライドを傷つけないよう、『あまり寝てないようで心配だから、一度専門の先生に診てもらいましょう』などと上手に受診を勧めるとよいでしょう」

私は典型的なうつ病なので、躁うつ病の辛さと言うのは正直しっかりと理解しているわけではありません。

うつ病でさえも自殺未遂をするほど苦しいのに、それよりも辛く苦しい病気と言うのは、想像すらできないというのが本音です。

>>うつ病の希死念慮に関する記事はこちら!

しかし、そううつ病に関してもうつ病に関しても、基本となる治療法は類似点が多くあると感じています。

まずは今回新薬として認可されたような薬物療法、そしてそれでも改善しない時には私も2回受けた「電気けいれん療法」、最後に日常生活を細かくチェックする事で自分自身をコントロールしていくという事。

医者や周りの人は、これらを誰でも簡単に出来るように言いますが、実際はうつ病や躁うつ病の状態で苦しんでいる中、これらの事をしていくのは本当に大変です。

そのうえで社会生活を営まなければいけないというのは、過酷な状況である事には変わりありません。

精神障害者は、就職する時に障害をオープンにするかクローズにするかを選択する事が出来ます。

クローズで就職活動をすると、就職しやすく高収入が期待出来ますが、ほとんどの精神障害者は業務に耐え切れずにすぐに退職しています。

個人的には、オープン就労で無理をしない状態で、低賃金から始めても長く勤務出来るところを探す必要があるのではないでしょうか?

また、生活をしていく上で傷病手当金障害年金に関しても正確な知識を身に着けて、出来る限り正当な保障を受け取る事も大切です。

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