脳に電気を流して、けいれん発作を起こさせると、うつ病や統合失調症などの精神疾患に高い有効率がある。
にわかには信じられないですし、信じたとしても怖くて自分は受けられないと言う人がほとんどです。
しかし、うつ病治療の中心とされている抗うつ剤による薬物療法の効果は、50%程度と言われています。
半数の人は薬物に対して反応性が低いのですが、それ以外に効果的な治療法はまだ確立してはいません。
電気けいれん療法は、「うつ病治療の最後の砦」と言われていて、重度の人や希死念慮が強い人には本当に最後の頼みの綱なのです。
電気けいれん療法の歴史
けいれんを引き起こし統合失調症を治療するという試みは1930年代から記録が残っています。
当時は薬物を用いてけいれんをひき起こす方法がとられていましたが、副作用や効果が確実ではない点からあまり広がりませんでした。
短時間の脳への電気的刺激による電気けいれん療法、すなわちElectroconvulsive Therapy(ECT)は最初の報告が1938年になされています。
電気けいれん療法の進化
電気けれん療法は統合失調症だけではなく、精神科では現在、うつ病など多くの精神疾患に利用されています。
かつての電気けいれん療法は麻酔なしで、患者への説明もなく医療者側の一方的な判断に基づいて行われるなど、インフォームドコンセントや安全性などに関して非常に問題の多いものでした。
しかし、電気けいれん療法がおこなわれ始めた1930年代ごろは現在のように効果の高い向精神薬もなく、電気けいれん療法が唯一といっていいほどの治療法だったため、やむを得ない事情もあったのも事実です。
現在では筋弛緩薬と麻酔を併用し、十分な説明と同意を得て行われるべき治療として精神科の学会からも提言されています。
電気けいれん療法の効果
ではどのような疾患に電気けいれん療法が効果があるのでしょうか。
この疾患と診断されば電気けいれん療法が治療として自動的に採用されるという疾患はありません。
電気けいれん療法は診断と症状、重症度やそれまでの治療歴、またECTを行うのことのメリットとデメリット等を考慮し、患者の希望も踏まえたうえで行われる治療です。
治療の適応となる主な疾患としては大うつ病、双極性障害(いわゆる躁うつ病)、統合失調症などがあります。
その他にも難治性の強迫性障害、精神症状を伴うパーキンソン病など、また薬物療法での治療に効果が見られないような精神疾患なども適応になります。
電気けいれん療法の効果は高く、厚生労働省が発表しているデータによると、84.8%の人に有効とされています。
一般的に電気けいれん療法は薬物療法で効果が低い人が受ける事を考えると驚異的な効果と言えるでしょう。
電気けいれん療法を行うタイミング
電気けいれん療法を行うタイミングとしては多くの場合、薬物療法の補助的治療や薬物療法の効果がないと判断されたときになりますが、場合によっては薬物療法に先行して行われることもあります。
電気けいれん療法を行うことで得られる具体的な体の現象としては脳内の神経への影響と心血管系に及ぼす影響があります。
まず神経への影響として大脳神経細胞が興奮しけいれん発作がおきます。
発作が起きた後は多くの場合、神経は逆にその興奮がなくなり脳波が一時的に平たんになります。
このような変化が精神疾患にどう影響して精神疾患や症状の軽減に効果があるのかはまだはっきりとはわかっていません。
現在の考え方としては、精神疾患の多くは脳の中の神経伝達物質の分泌やバランスが悪くなったためだと考えらえています。
神経に刺激を与えて興奮させることでその分泌などを促したりして、正常化するためではないかと予測されていますが、まだ証明されえたわけではありません。
ただ、最新の研究では、脳内ホルモンの一つであるドーパミンを増加させることが分かってきています。
うつ病になるとセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンが減少しますが、現在の薬物療法ではSSRIやSNRIなどセロトニンやノルアドレナリンを増加される抗うつ剤しかありません。
電気けいれん療法により、これまで薬物療法ではアプローチできなかったドーパミンを1か月~2か月と言う短期の入院治療で増やすことが出来るので、早期に社会復帰を果たす事が可能になると言えます。
また、心血管系へ影響ではけいれんの進行とともに心拍数は増加し心臓への負荷が大きくなり、発作が収まると逆に副交感神経が優位になり心拍数の低下などが起こります。したがって、電気けいれん療法は循環器系への負担が非常に大きいため、心筋梗塞、不整脈等の基礎疾患を有する患者に対しては慎重に適応が考慮されなければなりません。
主治医としっかりと相談してECTを行うかは考えるべきです。
電気けいれん療法の副作用
このように電気けいれん療法は副作用も一定の割合で存在します。
ECTでも最も重篤な副作用は死亡です。
その多くの場合は先に述べた通り、循環器系の合併症によるものです。しかし、その死亡率としては決して高いものではありません。
欧米でのデータでは約8万回の治療に1回程度の率です。
お産に伴う死亡なども一定の割合でありますが、それとあまり変わらない数字といっていいでしょう。
ですから過度に危険性を恐れる必要もありません。
特に循環器系疾患を有するなどのリスクの高い患者に対しての注意を十分払うことで、そのリスクも軽減することができます。
ほかの副作用としてはけいれん療法直後の一時的な呼吸停止や頭痛、筋肉痛、術後の意識障害などです。
また、従来の「木箱」による電気けいれん療法では、記憶障害のリスクが高いため、サイマトロン治療器による治療が推奨されています。
電気けいれん療法の手順
具体的な電気けいれん療法の手順としては、6時間程度の絶食、2時間程度前までに少量の水分摂取や内服薬も中止し、本人確認ののちベッドに移ります。
点滴を入れ心電図、血圧計などのモニター類を装着、けいれん刺激装置の設定などの準備を行い準備が整ったら、100%酸素を吸入して体に酸素をいきわたらせま
す。
十分、酸素化できたら静脈麻酔薬を投与、呼吸管理が問題ないことを確認した後、筋弛緩薬を投与し、十分筋弛緩がかかっていることを確認したら、けいれん発作中に口のけがを予防するための器具を口の中に挿入し、準備完了です。
人工呼吸を一時止めてけいれん刺激を行います。電気刺激が終了次第、人工呼吸を再開、けいれん発作が収まれば呼吸管理など行いながら刺激の少ない状況下で意識の回復を待ちます。意識回復後、血圧などが安定したら1回の治療が終了となります。
この治療を週に2~3回程度、合計6~12回の治療が標準的な治療のコースになります。一連の治療が終了したあと、精神科医による診察でその効果が評価され、その後の治療等が再検討なされていきます。
電気けいれん療法の問題点
意外な事に、電気けいれん療法の問題点の中には、死亡や重度の障害が残るという事は含まれません。
一番の問題点は患者が抱く「怖い」「危険」と言う思い込みです。
本来であれば、有効性も安全性も高い治療法で、うつ病の初期症状の段階から治療を検討しても良いものにも関わらず、実際には自殺未遂をしたうつ病患者などの緊急時や、これ以上治療方法が見つからない人にしか適用されていません。
精神科医は「電気けいれん療法は安全」と言う知識は持ち合わせていますが、同時に患者の反応が極端に悪い事も分かっています。
そのため、医師から電気けいれん療法を勧める事もあまりありません。
本来であれば電気けいれん療法によって救う事が出来た命も、「自分にはもう治療法がない。こんな苦しいまま生きる事は出来ない」と絶望感に包まれたまま自殺をした人もたくさんいるのです。
電気けいれん療法程、うつ病治療に貢献したにも関わらず、正当な評価を受けられていない治療は他にないと言えるでしょう。
最近では、NHKなどでも特集されていて、認知度も徐々に高まってきていますが、日本医師会や日本精神神経学会などが積極的にPRしない限りこの悪い状況を打破するのは難しいと考えます。
偏見は捨てて、電気けいれん療法の効果の高さと安全性を知ってもらえればと思います。
電気けいれん療法で治療をする前に障害年金の申請を
電気けいれん療法はうつ病に効果の高い治療法であるために、治療後はかなり体調が改善します。
しかし、すぐに仕事探しが出来るかと言うと、中々思うようにはできないのが現状です。
ストレスがない生活を送る分には問題なくなったとしても、仕事によるストレスはかなり大きく、再発するリスクが高いと言えます。
そのため、生活を安定させながら少しずつ社会復帰を目指す必要があります。
そのための一つの手段が障害年金の受給ですが、うつ病の症状が軽くなり安定した状態になってから申請すると不支給になる可能性が高くなってしまいます。
そのため、電気けいれん療法を受ける前か、受けた直後に必ず障害年金の申請をして下さい。
うつ病の初診日の時点で厚生年金・共済年金のいずれかに加入していて、保険料の納付要件を満たしていれば「障害厚生年金」の受給対象になります。
また、学生や専業主婦の方は初診日に置いて国民年金に加入していると思いますが、その場合は障害基礎年金の対象になります。
等級や障害年金の種類によって、受給出来る金額は大きく異なりますが、少ない人でも月に5万円程度は受給出来るので、生活費の大きな足しにする事が出来ます。
医師の書く診断書によって等級がほぼ決定するのですが、障害年金を受給するのは非常に難しいため、多くのうつ病患者は不支給や実際の症状よりも軽い等級になっているのが現状です。
障害年金はうつ病を克服できるかどうかの生命線になるので、慎重に書類作成を行いましょう。
コメント
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[…] 電気けいれん療法がなぜ統合失調症やうつ病などの精神疾患に大きな効果をもたらすのか、その詳しい作用機序は現代の医療技術や知識をもってしても明確にはされていません。 脳に一定の刺激を与えることで脳内で分泌される神経伝達物質の分泌量を安定させ、脳機能を正常化させて様々な症状を緩和させられると考えられていますが、具体的なメカニズムが判明していません。 現段階で解明されたことは、脳内ホルモン「ドーパミン」を増加させるという事です。それ以外のセロトニンやノルアドレナリンに関しては、研究段階にとどまっています。 […]
[…] 電気けいれん療法は薬で治療できない患部に干渉して治療を行う事ができるので、非常に有効性の高い治療法ではありますが薬等による治療法と比較してまだまだ効果の仕組みが分からない事もあるので電気けいれん療法を施工するには細心の注意が必要と言えます。 電気けいれん療法は確立された当初はその効き目から年間一千万人もの患者がこの治療方法を受けていると推測されています。 […]
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[…] 電気けいれん療法は、好む人と好まない人にやはり分かれてしまうと思います。しかし、何もしないで投薬だけで治療するよりは電気けいれん療法を取り入れることは劇的にいい方向に変化できる一つの選択肢ではないかと思います。実際に、私自身体験してみて元気になりました。 今では入院中の主治医が独立されたのでそこのクリニックにお世話になっています。 今ちょうど、社会復帰で正職員として9カ月目を迎えていますが無理のない範囲で自分の病気を否定するのではなくなってしまったものは仕方がないと思いどう向き合っていくのかと日々考えながら体への負担も考慮して働ける職場に感謝しています。 […]
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[…] 結論から言うと、医療保険の適用は可能です。 ただし、注意したいのが「うつ病の通院治療には使えない」ということです。 例外的に「通院のみでも保険適用」という場合は可能ですが、そうではない保険がほとんどでしょう。主に入院や手術に対する場合に適用となりますから、入院したりしなければまず何らかの保険給付金を受け取れることはないでしょう。 このため、入院や手術を受けない限りは適用とはならない可能性があります。うつ病の場合、あまり手術ということはありませんが、入院によって給付金を受け取れる可能性があります。 うつ病で入院しなければいけないケースと言うのは、実は稀で、基本的には自宅療養と同じで薬物療法しかしてくれません。 但し、希死念慮が強く自殺の危険性があったり、入院している方が精神的に安定する人は入院する事があります。 また、治療の一つに「電気けいれん療法」と言うものがありますが、電気けいれん療法に関しては1ヶ月から2か月間の入院が必要になってきます。 […]
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[…] また、入院費などは3割負担なので、電気けいれん療法などの治療を受けると大きな出費になります。 […]
[…] また被害妄想の時に、イライラしてしまう気持ちが働く場合は、それが自分に向いているのか他人に向いているのかが重要になります。 うつ病の場合は自分に対して攻撃的なイライラが起こることが多いです。 それは不安な気持ちや焦燥感のせいで落ち着くことができずに起こります。 精神的にが疲れているせいで起こるので、薬物治療と一緒にストレスから遠ざけて心の休息を取らせてあげることが重要です。 「なんでこんな事が自分は出来ないんだ」「前はもっと残業をしても全然平気だったのに・・・」と自虐的になってしまう事もあります。 この状態が酷くなると、リストカットやオーバードーズ、自殺と言った行動に出てしまうので注意が必要です。 精神的にどうしても安定しないようであれば、主治医に相談して電気けいれん療法を受けてみるのも一つの方法ではあります。 […]